惜別!留萌本線(1)

昨今ちょっとバズってるJR赤字ローカル線問題。以前から廃止を申し入れられていた留萌本線ですが、今夏、廃止までのマイルストーンがなんとなく出来上がり、再びこの問題が注目されるようになりました。そして8/30正式に沿線自治体が全線廃止に合意。石狩沼田~留萌が来春の2023年3月末まで、残る深川~石狩沼田が2026年3月末までという、二段階廃止となりました。ただ、この留萌本線、現在の利用状況の話になるまで努力を怠ったわけでなく、急速な少子化や道路を中心としたインフラ強靭化が影響し、結果、利用者減で廃止になっていくという、なるべくしてなった典型的な経済由来の凋落路線だったりするんです。↓

(写真:藤山~大和田、1999.4)

まず路線の地理的な問題。Googleマップで見れば一目瞭然ですが、住居エリアで市街地を構成するのは起点の深川と秩父別、沼田、留萌のみ。深川、秩父別、沼田を深川経済圏と見ても沿線市街地となる沼田と秩父別の人口は足して5000人強、高齢化率なんと4割を超えています。深川の人口も2万人ちょっと、高齢化率はすでに4割を越え、この深川エリアだけでも急速な高齢化が進んでいます。まあ、深川経済圏ではなく、滝川、雨竜も含めた大滝川経済圏としてみるほうが正しいかもしれませんが、どちらにしろ特に労働生産人口が減って高齢化が進むと、人口統計推移よりもバイアスがかかって利用する人が人口減以上に減るんです。↓

(写真:秩父別、2016.5)

終点の留萌側はほぼ留萌市街に人口が集中。高齢化率は3割後半と深川エリアより状況はいいも、沼田から留萌市街入り口までコンビニがないという超過疎地をつらぬく。。。災害に強い自動車道の整備も終わって人流が変わり、旧来国道での沼田~留萌での沿道サービスも消滅したという状況。↓

(写真:恵比島、2016.5)

唯一の交換駅峠下。まわりに人家はほぼない超過疎エリア。そもそも列車交換のために作った駅なんでしょうね、もともと貨物列車が多かったので大和田や幌糠、藤山、恵比島、沼田、秩父別、北一已にも交換設備があったんです。今だと想像できないですね。↓

(写真:峠下、2015.11)

この峠下駅、現在の留萌本線の数少ない鉄道見所ポイントでしょうか・・・構内踏切が現役で、昔の北海道国鉄の交換駅の風情をそっくり残しています。↓

(写真:峠下、1999.4)

ただ真冬は強烈に寒いところ。しばれまくり。峠越えの場所なんで当然といえば当然。↓

(写真:峠下、2016.2)

立派な駅舎がありますがすでに無人駅。冬季は降雪対応もあってか、日中常駐されている職員がいます。乗降客はほぼなしでも冬季は莫大な維持コストがかかってるんでしょう。↓

(写真:峠下、2016.2)

・・・この景色を見ると昔の国鉄風景・・・ですね~、留萌本線はあんまり沿線風景に特徴ないのですが、ここ峠下駅はほんと、昔の北海道国鉄を思い出します。道内のこんな感じの交換駅はもうないんじゃないかなあ。↓

(写真:峠下、2016.2)

天北線で撮影しました!っていっても信じてもらえるような一コマ。↓

(写真:峠下、2015.11)

来春にはなくなっちゃうかもってことなんで興味ある方はお早めに。↓

(写真:峠下、2015.11)

そしてこちら、現在終点となっている留萌駅ですが、結構重厚なつくりだったりする。↓

(写真:留萌、2015.10)

かつては羽幌線が分岐し、石炭貨車がヤードを埋めていたっていうんですが、今はこんな感じのスカスカ。ホームも駅舎側1本しか使われません。音威子府よりもガリガリになりました。↓

(写真:留萌、2016.5)

島式ホーム側は増毛までの区間が廃止されてからは使われていません。ちなみに羽幌線ホームはさらに向こう側、船場公園のドッグラン向こうあたりにありました。↓

(写真:留萌、2015.10)

改札コンコースは過去の栄華を醸し出します。今は1両のワンマンカーだけしか走らないので風格と釣り合ってませんね。寂れ方が半端ない・・・↓

(写真:留萌、2015.10)

石狩沼田~留萌は沿線そのものが寂れまくり。↓

(写真:大和田~藤山、1999.4)

並行する国道を走る車は大半が自動車道へ。今や列車撮影の際、車の影は映り込まないでしょう。↓

(写真:大和田~藤山、1999.4)

とにかく沿線に人家が超少ない・・・並行する道路も車がほとんど走らない・・・ガソスタもコンビニもない。↓

(写真:藤山~幌糠、2015.11)

冬はなおさらな風景。日中はいいも夜はとっても寂しいところになります。12~1月はこんな穏やかな天気は少なくて結構吹雪くし・・・↓

(写真:藤山~幌糠、2016.2)

留萌から人が乗ってこないけど、途中駅からはもっと乗ってこない。めぼしい観光スポットもないので客の大半がすでに乗り鉄っていうのも皮肉な話。すでに深名線の晩年と同じ状態でほぼマニア向けエンターテイメントとなっています。もはや、キハ54を使ったJR運賃で運行する延長50kmもある格安動態保存鉄道 ってのが正しい表現でしょう。↓

(写真:幌糠~峠下、1999.4)

SLすずらんが走っていたころは大盛況だった恵比島駅も、ブームが終わるとさらに寂しい駅になってしまいました。↓

(写真:恵比島、2016.2)

撮影用のセットが残されているので風格ある駅のままではありますが、駅前の過疎化が止まらない状態でもともとの客が果たして住んでいるのか・・・50年前までは恵比島から留萌鉄道が分岐し、石炭列車が入れ代わり立ち代わり運行されていたらしいんですが、その面影もまったくありません。↓

(写真:恵比島、2016.2)

一方で、昔の標津線みたいな雰囲気も・・・なぜかところどころ国鉄が残ってて鉄道ファンが萌えてたり・・・↓

(写真:恵比島、2016.5)

ザ・仮乗降場な、こんな駅もまだ健在。かつて道内にはたくさんあったけど、最近は廃駅が増えて今や絶滅危惧種になってしまいました。↓

(写真:真布、2016.5)

なんか北海道のローカル線って典型的な風景を行くキハ54。↓

(写真:恵比島~真布、2016.5)

こちら、増毛までの線路があったときの早朝の列車送り込み回送。なんと北旭川から留萌まで約87kmの道のりを回送で2両編成で走ってたんです。毎日客扱いなしで87kmを・・・東急東横線が24kmほどと考えると、いかに極限の鉄道経営してるってわかりますよね。朝だけでなく、夜の留萌止まりも北旭川まで回送してましたから回送だけで175kmって。もちろん深川始発も実は36km離れた北旭川から回送で持ってきてましたから合計で250km超/毎日の回送を運行って・・・↓

(写真:北一已~秩父別、2016.5)

しかも当時には2両編成って回送が留萌本線で一番長い編成だったって・・・悲しすぎますね。留萌で夜間滞泊があってもいいんですが、冬季対応が難しいみたいなんですよ。現在もまだ留萌始発用&最終後の1両ロングラン回送が走っています。北旭川~深川・北旭川~留萌の回送コストだけでも相当な費用でしょうね。同じようなことが宗谷本線音威子府始発最終用にこの扱いがあります(60km近く走る豊富→南稚内回送ってのもある)。こちらも名寄~音威子府で50km超の区間を朝夜回送が走りますが厳しい冬を考えると基本夜間は車両をまとめて置いておく がセオリーのようです。↓

(写真:大和田~留萌、2016.5)

こんな状況でよくここまで我慢したって内容です。芸備線 備後落合~東城の事例がよく出ますが、ここは厳冬で冬のコストも上乗せされるから、内地に比べてもっとキツイ。留萌自動車道の整備待ちでしたってこともあるも、沿線自治体が廃止を反対してここまで引き延ばすなんて、ちょっとやりすぎに感じます。高校生の通学をよく引き合いに出すんですが、同じコスト掛けて通学バスを自治体で整備したほうが便利でコストも抑えられたはず。しかも支庁越えての通学需要なんてほとんどないはずだし、何より高規格道路が並行し高速バスも走っている、全線維持にこだわるのはかなりハテナ。もちろん、晩年は何かと運休していたJR北だったんで、存廃問題でのいやらしさは御相子かもしれません。↓

(写真:北一已~秩父別、2016.5)

ちょっと前までは2両編成も日中走ってたんですが・・・今の姿ってほんと、過去を知ってる人にとってはかなりの落ちぶれ様なんです。↓

(写真:石狩沼田~北秩父別、1999.4)

快速だって走ってたんですよ~↓

(写真:北一已、1994.7)

そしてようやく今夏に2023年3月X日で石狩沼田~留萌の部分廃止が「ほぼ確定」となり、2026年春まで深川~石狩沼田だけ暫定営業にて留萌本線の全線廃止って流れになっています。全線廃止が認められ、通学需要のある深川~石狩沼田は3年間の猶予をもらう、二段階廃止となりました。JR北海道としては石狩沼田での折り返し設備と信号システム変更で一時費用は発生するも、少なくとも部分廃止でも早朝夜間の無駄回送は1運用だけに減らせるし、除雪が大変な峠部分もなくなるので、負担は大きく軽減されるでしょう。↓

(写真:北一已、2016.2)

でも沼田と秩父別の総人口って5000人強。高齢化率4割を超えてる・・・デマンド交通の整備や通学バスの整備など、3年延期するコスト相当の対価を見返りで求めたほうが理にかなってるような気がします。国から金をもらえるチャンスってそうそうありませんから、自治体首長はよーく考えたほうがいいんじゃない?って思ってしまいますね。もしかしたら前倒し廃止もあるかもしれません。ま、鉄道ファンとしては消えていくのは寂しい限りですが、少子高齢化ってこういうことなんで・・・ただただ悲しいなあ。・・・つづく↓

(写真:秩父別、2016.2)