令和改元スペ:フィンランド-ヘルシンキ市交通局
フィンランドは北欧東端に南北に延びる国。北緯60度から北に位置しているのとメキシコ湾流からも離れているので冬は厳冬。最近は長いロシアとの国境線からきな臭い空気も出てきてますが、もともと歴史的にはWW2まではロシアとスウェーデンとに挟まれてる地勢的な影響で戦争が絶えなかったところ。なので今も軍隊は比較的大きく、男子の徴兵制もまだあるし、一般市民の銃の携帯も認められているという、少し毛色の違う国家。とはいえ、町中に装甲車が待機してるとか物騒な雰囲気はまったくなく、いたって平和でのんびりしたところです。人口は550万人、北海道とほぼ同じ規模でGDPもほぼ一緒。EUに加盟し、通貨もユーロを採用。英語も比較的通じるし治安もいいので旅行者にとって居心地よいところです。不愛想で暗そうな顔をした人が多いと感じる人もいるそうですが、基本話すと愛想よく、はにかむ雰囲気はどこか日本人っぽくて親しみがもてます。とにかく優しい人が多い印象ですね・・・で、さて、そんなフィンランドですがまずは首都ヘルシンキの公共交通からご紹介。↓
ヘルシンキには人口の4分の1くらいの140万人が暮らし、バルト海に面して港湾も発達しています。札幌が200万人都市なんで北海道ほど人口集中してませんがフィンランド最大の都市という風格があります。日本だと京都市くらいの人口規模ですがヘルシンキ周辺は緩やかな丘陵地で土地に余裕があり、京都のようにゴチャゴチャしていません。ただ、丘陵地ということもあって、南北はVR(旧国鉄)、東西に地下鉄が、中心部はトラムが網羅的に発達しています。↓
ヘルシンキの都市交通は市が直接運営するスタイル。市交通局が地下鉄、トラム、バスを運行しています。まず地下鉄からご紹介。路線は海側に東西に延び、放射状に延びるVRの路線を補完する形で形成されています。開業は1982年とヨーロッパではまだ新しい部類。その後路線延長を繰り返していますが、末端部が分かれるも東西に1本だけのシンプル構造となっています。西部と中心部は地下を走るも、カラサタマから東はほぼ地上を走る立体交差構造です。末端部の分岐先別に2系統の運行となっています。↓
ヘルシンキ地下鉄も隣国スウェーデンストックホルム同様、地下駅の一部が防空壕を兼ねており、岩盤をくりぬいた頑丈なつくり。↓
現在車両は3形式。開業時から走るM100系はフィンランド自国製。当時車体は国営の金属加工・機器メーカー バルメット社で、電装はストロンベルグ社(のちにアセアに買収されて現在はABB)で作り上げ、世界初VVVFという代物だそうです。2両1ユニットで44編成が作られましたが、初期車6編成はすでに引退。現在は39編成が2+2の4両主体で運行されています。登場から40年以上となりましたが、現在2回目の大規模更新を進めており、しばらくは活躍しそうです。↓
そしてこちらM200系。独DWA(のちに買収されてボンバルディア)製でベルリンのSバーンと似ています。2000年に登場し2両1ユニットの12編成が導入されました。通常2+2=4両で運行されるため、6本のみの運行となって少々レアな存在。M100やM300との併結もできないため、M200単独での組成運用となってます。現在M100同様に大規模更新実施中。↓
最新車両はこちらのM300系。CAF製で2014~15年に増備、4両1ユニットで20編成が運用されています。今年追加で新たに5編成が入る予定で総勢25編成と最大勢力になります。M300はすべて自動運転対応車なんですが、M100やM200は対応していないため、現在両形式に行っている大規模更新で自動運転機能を付加されるかもしれません。ちなみにこちらは4両1ユニット。M100は2+2+2の最大6両化までできるのですが(朝夕ラッシュ時に走るらしいが見たことない)、将来中間車両+2して常時6両化もあるかもしれません。地下鉄のホーム長は6両分あるので、北欧の人はキチキチが大嫌いなんで増車はあり得る選択肢。↓
ちなみに車両番号は、M100とM200は1両ずつに番号を付与、M300は編成ごとに付与され、4両それぞれにABCDを枝番で振っています。ちなみに地下鉄は全線第三軌条での集電、軌間は珍しいフィンランド規格の1522mmでVRと同じです。↓
続いてトラム。1891年開業の歴史ある路線で、現在は路線長96km、保有車両120両超の大きな路線となっています。ヘルシンキの中心部のみの路線網で車両カラーリングのクリームと緑のコントラストはヘルシンキのシンボルの1つですね。↓
現在形式は3形式で運用中。まずはおなじみのNrII。ロット番号が71~112まで振られ42編成が運用中。もともと2連接車だったのを中間低床車両を挟みこんで3連接車となっています。いわゆる即席バリアフリー車両。 ヘルシンキのトラムはエンド部がループ線なので車両すべてが片運転台使用。なので車両左側には乗降口がありません。↓
続いて主力のシュコダ製のArtic。ロットナンバー400番台で低床3連接車で70編成もある一大勢力。↓
今ではトラムの中で一番多く見られる車両になりました。昨年からは同じシュコダの増備車「Artic X54」を導入。ライトレールとして新たに開業する「レイドジョーカー(Raide-Jokeri )」用ですが市内路線に先行投入されています。↓
そしてこちらバルメット製「NrI」は大半が廃車され2連接車は過去のものとなっています。10編成だけ低床中間車を組み込んだものがあり、新たなロット番号113~122をもらってNrII同等に使用されています。↓
こちら、新生NrIの3連接車ですが、見た目はNrII3連接車と変わらないですね。また、こうした全面広告車両もたまに走ります。ちなみに広告主はエストニアのタリンとヘルシンキを結ぶフェリー会社ですね。↓
そしてこちら大問題となっていたアドトランツ(現シュタッドラー)製バリオバーンシリーズ。ロット番号は200番台で1998年から2003年にかけて40編成が導入されましたが、故障や不具合が多発し、可動車両が大幅に不足。日常の通常運行ができなくなり、一時ドイツから中古車を購入して車両不足を補うなど大混乱となりました。メーカーとは補償問題で大モメになったようですが、結局設備面での改善策はなく、購入から20年経たない2019年には使用停止となってしまいました。↓
一時は5連接車で輸送力があるバリオバーンが多用されていたんですが・・・。↓
メーターゲージでカーブが多く、ヘルシンキの線路と台車の構造とがうまく合わなかったようです。こんなこともあるんですね。↓
とはいえまだ新しい車両なのでドイツに多いメーターゲージトラム会社への譲渡を検討中。具体的な都市名はあがっていたんですがきちんと成約できたのかな?↓
あとこちら、観光シーズンに走るチャータートラム。トラム博物館が所有していたりする古豪たちを動態保存しています。この日は1928年製「135」が運行中でした。↓
電車本体を保護する目的でしょうか、乗客は電車に直接乗せず、後ろに連結するオープン客車に乗車させて走ります。↓
なかなか優雅ですね~↓
街並みもきれいな旧市街を中心に運行されるので観光にはもってこい。↓
中心部の大半は歩行者天国になってるんでトラムが人をかき分けて進みます。↓
ヘルシンキトラムは現在路線延長などの強化策を推進中。数年後には走る車両もがらりとかわるかもしれません。↓
車両更新となると真っ先にNrⅡがターゲットになるんでしょうね・・・↓
とはいえ、まだまだ車両はきれいなんで、どこかへ再就職もあるかもしれません。ただ国内は去年開通したタンペレのトラムには最新の車両が入りましたので行くとしたら海外かな。・・・・ということで、次回は旧フィンランド国鉄の「VR」をご紹介。↓