宇部興産伊佐セメント工場企業専用線
JR美祢線美祢-セメント工場 3.2Km(場内エンド部分まで)
最終日
2013年12月6日?
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宇部興産伊佐セメント工場専用線は、JR美祢線美祢駅北側にあった貨物ヤードから延びる専用線で、駅の東3kmに位置する宇部興産の伊佐セメント工場とをつないでいました。通称「岡見貨物」と呼ばれる、美祢と山陰本線岡見の間に走る貨物列車の受払に使用され、伊佐セメント工場からは炭酸カルシウムを岡見駅からつながる中国電力三隅火力発電所へ出荷。逆に三隅火力からは発電で発生するフライアッシュを受け伊佐セメント工場へ納入していました。
2013年7月28日、豪雨により岡見貨物途上の山口線で阿武川にかかる鉄橋他、多数線路流出により不通となり貨物列車も運休。同年12月に2014年3月末での契約終了に伴う貨物列車自体の廃止がアナウンスされ、豪雨前の運転を最後に貨物輸送は終了となりました。12月の専用貨車の解体を目的に、伊佐工場までの納入運転がおそらく最後の運転となり、さよならイベントもなくひっそりと役目を終えました。
フライアッシュと炭カル
炭酸カルシウムは石炭火力発電所の排煙脱硫用として使用、フライアッシュは石炭の燃えカス(灰)で、セメント補助骨材、混和剤などとして使われます(セメントに混ぜると耐久性や施工性、流動性がよくなる。三隅火力は石炭火力)。三隅火力と伊佐セメント工場では互いで発生するバイプロダクトを鉄道貨物を介して交換していました。
他の類似ケースとして、太平洋セメント藤原工場と中部電力碧南火力発電所とでやり取りされる炭カルとフライアッシュ。藤原発の炭酸カルシウムと中部電力碧南火力発のフライアッシュを三岐鉄道~JR~衣浦臨海鉄道を使って同じ貨車を相互利用しています(碧南火力も石炭火力)。
物流コストは返空車を別の荷で埋められればさらにコストを下げられるのですが、荷姿が合わないとかタンク洗浄がいるとか、仕入先に返すものがそもそもない といったことなどから、普通はなかなかうまくいきません。そういう意味では、炭カル⇔アッシュのケースは、物流業界内ではかなりレアな成功例なのでしょう。
大半は道路沿いを走る専用線
この専用線は美祢駅北のヤードから一旦南下して、市街を横断、そのまま東に位置するセメント工場へとつながっていました。まだ廃止ホヤホヤですから、ほとんどの線路跡が残っていると思われますが、工場入口までの距離は約2km弱、ヤードから場内までは所要5分くらいでしょうか。美祢市街を横断して国道316号線沿いに進んで伊佐川沿いから伊佐工場へと入っていました。伊佐工場内には入換ヤードがあるようですが、高いコンクリート壁がそびえ、中がどうなっているかはまったく伺えません。
晩年は岡見貨物の出荷と受け取りで平日1往復が運行されてましたが、かつては工場~美祢ヤード間をピストン運転するほどの賑わいあるところでした。伊佐工場からは美祢線経由で宇部港にある同社セメント工場まで石灰石運搬列車が頻繁に走り、その発着に合わせて貨車の受払が行われていました。1999年4月、JR経由の貨物は宇部興産自社所有の専用道路経由に全面転換され運転本数は大幅削減となります。
美祢線には、美祢の先、重安から宇部岬までを結んでいたセントラル硝子向けの鉱石列車もありましたが、2009年10月に廃止され、美祢線を走る貨物はこの岡見貨物のみとなっていました。
メインスイッチャーは黄色の35t機
入換・運搬に使われるメイン機らしい専用機は日本通運の黄色のセミセンターキャブで、専用線走行時は黄色いパイロットランプをクルクルさせながら運転されてました。車体にNo12と打ってますが、他に同類形式はいないようなので、前の所属地での番号がそのままなのかもしれません。これとは別にもう1台、ロッド式のセンターキャブがいたのですが、何度か訪問しましたが彼にあたることはありませんでした。
またDLは一部美祢市街の中を突き進むため防音仕様となっているようで、かつては車輪部分をカバーしたものが走ってましたから結構騒音を気にしていたようです。レールの軋み音も軽減すべく、工場出入り部分のカーブで入出場時に散水をしてました。
なお、2010年夏に豪雨により美祢線全線にわたって運休となり当専用線も運行休止。一時は廃止の噂も出ましたが、2011年9月に全線復旧となり、貨物列車も2011年10月17日から運行開始となり当面存続かと思われた矢先、豪雨運休でそのまま廃止となり、消化不良のまま消えてしまいました。
運行・入換情報(2012.3現在)
この専用線、運行日が土日祝日きちっと運休、お盆年末年始も運休という、サラリーマン泣かせな専用線でした。岡見貨物自体は美祢発着の到着分が日月と祝日翌日が運休、出発分は金土祝日前日が運休となっていましたが、専用線運行は平日対応のみなので、基本月~金の休み除く が運行パターンでした。また月1回の保線運休時も貨物列車が運転されませんが、本線に関係なく貨車の出し入れをしてました。
ただ、月曜朝受け取りはないとか金曜午後出荷分がないとか、祝日挟んだ前後日には運転パターンが変わる等変則ルールがあるようで(ただし、JR貨物の運転ダイヤから考えると平日ならちゃんと午前午後とも受払があるはず)、しっかりゲットするなら週半ば・火水木狙いと、まあわがままなところでした。工場都合の不定期運休も結構あったり、第4週目は保線運休もありましたから難易度高めの専用線でした。
運転時刻はJR貨物の発着に合わせて受払が行われますのでJR貨物到着の前後に運転となります。わかりやすいのは朝の受け取り。JR貨物 が美祢に到着する30分前あたりから日通職員がDL周りでスタンバイします。DLは美祢ヤードの南端の詰め所前に留置されていました。 (2011年3月改正ダイヤベースで)南大嶺で普通列車と貨物列車が交換するタイミングで運転士がスイッチャーに乗り込みます。
貨物列車が840頃美祢駅に到着するとそのままヤードには入らず駅ホームにて一旦停止。なんかの確認をして数分後ヤードへ直接入って行きます。駅からは入換扱いで貨車を入れ込むのか入換灯が点灯しています。ヤード北端の所定停止位置まで移動するとJR機を切り離し機関車は 転線。貨車だけになった時点で専用機が動きだし貨車のお尻に連結します。
安全確認後新編成はすぐに工場へ向け出発します。美祢での入換は15分ほどであっという間に終わってしまいます。ヤードから工場内までも そのまま運んでいくだけで特筆すべき動きはありません。残ったJR機は専用機を見送って長門市行き普通列車が通過後、単機で厚狭に帰ります。
次に工場からの出荷は、1450~1500に出場。ヤードまで専用機が牽引後、貨車を留置し、スイッチャーは切り離されて転線、 南端の所定位置に移動して、作業終了となります(美祢にそのまま留置)。続いてすでに到着しているJR単機が、工場から持ってきた編成のお尻について編成の仕立てが完了。午前午後とも美祢のヤードでやってることは単に機関車の付け替えだけでした。
編成が仕上がった後の岡見貨物は一旦ヤードから美祢駅に入って出発時刻まで小休止。所定時刻に発車となり、山口線経由にて翌朝岡見に到着となります。岡見での荷の受払はJR機がそのまま発電所に進入・入換を行っていました
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