解説

台湾北部の桃園と火力発電所のある林口を結んでいた林口線。2013年1月1日をもって桃園駅高架化工事に伴い運行休止となり、前日に最終の石炭列車が走りました。

もともと貨物専用線として作られた路線で、開業は1968年と、比較的新しい路線でした。かつては沿線に並ぶ中油(中國石油公司桃園煉油廠)、台泥(台湾水泥桃園工廠)など6つの専用線が延びていましたが、晩年の貨物列車は終点の台湾電力林口發電廠の石炭運搬のみと、かなりさみしくなっていました。

またこの林口線には桃林鐵路として、桃園縣が無料で台鐵委託の列車を走らせていました。林口線鉄道輸送による朝夕ラッシュ緩和効果のフィージビリティスタディだったようですが、乗客を見てるとそれは?(学生がほとんど)という感じで結果としては旅客鉄道として再生する選択肢はなくなりました。桃園空港へのアクセス線としての期待もありましたが、すでに空港アクセス鉄道は「桃園機場捷運」として確定し、無料運行の意義も失われてました。

この林口線は全線単線で、途中行き違い設備を持ってませんでした(一応あったのですがいつからか運用中止していた模様)。すべて閉塞運行で、桃園駅でタブレットを持った人が乗車し、全線で1列車しか入れない運用をしていました。そんなことからかつてはダイヤが過密となり、日中に石油やセメントを、夕方深夜から朝までが石炭列車が主、という棲み分けをしていたようです。

2008年に林口近くに台北港が開港。大半の石炭はこの台北港からトラック輸送されることになり、石炭列車は大幅減便となっています。日中に4往復の設定があり、無料の旅客列車の朝の筋のあとに4往復が入り夕方の旅客列車までに運行が終わる設定でした。 運行日は金曜日~月曜日までの週4日の変則運行で土日運転するという、貨物の世界ではめずらしい運用でした。

この荷である石炭は縦貫線海線の龍井~大肚にある龍井貨物駅から仕立てられてました。隣接する龍井石炭センターから石炭を積み、林口とを単純往復。龍井への石炭は麥寮のコンビナートからトラックで運ばれてきました。かつては深澳線脇にあった深澳火力發電廠への石炭輸送も同様に行っていました。今回の林口線廃止でこの石炭センターも不要となり、併せて台湾から石炭列車が消滅することとなりました。

2012年に入り桃園駅の高架化工事が始まりましたが、林口線は公式上高架化工事期間の5年停止とされてますが、石炭輸送がなくなることから事実上廃止になると思われます。終点の林口あたりは風光明媚なことから何度かトロッコ列車の運行も噂されましたが臨時列車が数回運行されたのみ。観光路線としての復活を期待したいものです。

ちなみに、桃園には隣接して穀物の専用線がありましたが、2011年に一足先に廃止となり、桃園貨物ヤードもすでに撤去されてしまいました。

旅客輸送の桃林鐵路はこちら でご紹介


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■桃園

・龍井からの積車がやってきました。以前貨物ヤードがあるときはこの中線に入らないパターンもありました。

    -2012.5.5


・列車到着と同時にタブレットを持った係員が登場、一旦停車後そのまま乗車し、すぐに林口へ向けて出発です。ある意味この係員さんがタブレットみたいな感じでしたね。

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・林口線は線路脇を少し下っていく感じで繋がっています。林口から列車が戻ってくるまでの1時間40~50分は林口線に列車は入れません。

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■桃園~桃園高中

・桃園からの列車がやってきました。軒先をかすめるような線路です。

     -2012.5.5


・DLのR10番台はほぼ貨物列車のみに使用、ドロロロローという独特のエンジン音はかなり遠くからでも聞き取ることができます。貨物輸送が減る中、廃車になるロコも出てきました。

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・ここは山鶯路との踏切。ゆっくりした長い編成が通るとたまったバイクが一斉に走り出します。台湾らしいですね~。

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・林口からの列車が帰ってきました。桃園から林口線に列車が入れば必ず帰ってきます。桃園⇔林口は所要45分、石炭の積み下ろしが15分くらい、戻ってくるのに45分くらいというのが目安でした。

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・このあたりは線路脇が遊歩道になっていて写真が撮りやすいところでした。

    -2012.5.5


・貨車は日本のセキとよく似てますね、DL以外は限りなく日本っぽいです。午前・昼ごろの列車なら、桃園行きがいったあと10分ほどですぐに林口行きが来ました。

       -2012.5.5




◇EMU300系自強號

・2012年春当時、土日祝日運転の臨時自強號の1本は未だ300系が使われました。一世代前のこの車両は日本の485系みたいなもんですね。

   -2012.5.5


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