令和改元スペ:フィンランド-VR①

前回のヘルシンキ市交通局からの続き、今回はフィンランド全土の鉄道輸送を行うVR-Groupのご紹介。フィンランドの鉄道はインフラを政府が所有、旅客がVR-Groupが、貨物はVR Transpointなど、機能別に会社が分かれています。それぞれ政府が100%の株式を保有しており、実質国営鉄道といっていいでしょう。VRの元のネーミングも「Valtionrautatiet(=国営鉄道)」から来てます。「VR-Group」という名前は2011年にCIで変更した名前なんですが、もともとはVR-Yhtymäという名前だったのをYhtymäというフィンランド語を英語にしただけのものだったりするんです。ただ合わせてコーポレートカラーを赤から現在のライトグリーンに変更。会社は変わったよってのを前面に打ち出したら、なんかガラッと変わったような感じになったんですよね・・・イメージ戦略って大事だ。↓

(写真:Tikkurila、2018.11)

フィンランド全体の鉄道路線長は9200km、うち旅客を扱うVRは7200kmを担当。電化区間は全体の3割ほどですべて交流、旅客幹線はほぼ電化が完了し一部区間は220km/hの高速運転も行わてます。レール幅は1524mmというロシアゲージでロシアとは直通運転を行っていますが、隣国スウェーデンとは北部で接続するも軌間が違うため直通運転はできません。↓

(写真:Helsinki、2018.3)

国土は日本の約9割ほどの広さを持ちますが、人口は550万人と密度はかなり稀薄。緯度が高い国なので大半の人は南部に住んでいます。それでも鉄道は北部高地エリアを除き全土を網羅しています。長年スウェーデンとロシアの支配下にあったことから独立維持のインフラとして?何か意味を持っているのかも。ヘルシンキを見てても人口のわりに運転本数も多いしラッシュ時間帯でも混雑しませんから恒常的に赤字もあまりみんな気にしてない?もちろん枝線的な赤字路線は廃止してるんですが、路線維持はきちんと政策的に考えてるんでしょう。鉄道は道路とか同じ重要な公共サービスとして見てるのと、地政学的な部分も見てるんでしょう。JR北の幹線も廃止したいって話ありますが、政府や道の関係者はもっと勉強したほうがいいじゃないかい?↓

(写真:Helsinki、2019.10)

さてさて、フィンランドの鉄道はヘルシンキ中央駅を中心に放射状に延び、各地から列車が入ってきます。街は南にどん詰まりなんで、扇状に路線が伸びる感じかな。なので駅舎はかなり立派なファサードを構える大きいもの。↓

(写真:Helsinki、2019.10)

国際列車は地理的なものと軌間の問題でロシアとのみ行き来。旅客はアレグロ(Allegro)と呼ばれる専用列車が使われます。VRでの形式は「Sm6」。ロシア鉄道とVRとの折半で作られたアレグロ社が運行。ヘルシンキとサンクトペテルブルグとを結びます。↓

(写真:Helsinki、2018.3)

こちらアルストム製ですがもともとはイタリアフィアットのペンドリーノの技術で製造。2002年にアルストムがこの鉄道会社を買収したからなんですが、ペンドリーノシリーズ同様、振り子電車でフィンランド国内では最速220km/hで走行します。↓

(写真:Hiekkaharju、2019.3)

7両編成で1ユニット、4編成が在籍。現在はロシアのウクライナ侵攻にて運行を停止中。かつては1日4往復の活気ある国際列車でした。今の戦況からこの先相当期間動かないのでは・・・↓

(写真:Helsinki、2018.3)

アレグロって車種が少ないVRの中で異色の存在だったんですがね・・・まったく意味ない戦争なのにやめれない愚かな政府というか・・・歴史的にも政府がアホだと国民は悲惨なんですよね~そして恐ろしいことにアホは歴史的に継続するんですよ。日本政府もちゃんとしててね。↓

(写真:Helsinki、2018.3)

で、こちら、1995年から導入された「Sm3」タイプ。フィンランドの元祖ペンドリーノ。この振り子車両の導入で高速化を大きく推進、一気に移動での鉄道の地位上げました。↓

(写真:Tikkurila、2018.3)

6両で1ユニットの編成、5両の座席車+食堂車という贅沢な作り。2ユニット連結まで可能で、同系のアレグロと違い特徴的な連結器が車両前面にあります。昔はちゃんとカバーつけてたんですが増解結時の作業簡素化とかで外しておくのが標準になったかもしれません。↓

(写真:Tikkurila、2018.3)

Sm3は日本の特急車両の扱いでしょうか、"S220 Pendolino"という名前で長距離速達列車で使われます。18編成しかありませんが人口が少ないのでこれでも十分なのかもしれません。S220は全席指定なので乗車には事前予約が必須です。↓

(写真:Hiekkaharju、2019.3)

こちらはインターシティ用のプッシュプル。欧州あるあるの編成ですね。着席重視の2階建て車両+機関車のスタイル。機関車はたいていがSr2というスイスLok2000モデル。同一の機関車は香港の九広鉄道でも使われてました。↓

(写真:Tikkurila、2019.3)

客車先頭側はこうした運転台付き。↓

(写真:Tikkurila、2019.3)

2階建て車両なんでかなりの威圧感あります。食堂車や寝台車の2階建て車両もあるんですよ。↓

(写真:Tikkurila、2019.3)

プッシュプル編成はVRではまだまだ中長距離列車の主力。多客期などでの増結などフレキシブルに対応できるため、使い勝手がいいようです。↓

(写真:Tikkurila、2019.3)

こちら、割とヘルシンキ界隈でよく目にする「Sm4」。使われ方としてはE231系みたいな近郊形電車とでもいうんでしょうか、タンペレなどのヘルシンキ近くの中核都市との輸送に使われています。↓

(写真:Tikkurila、2018.11)

1998年から導入のフィアット製→アルストム製で、2両1ユニットの30ユニット(編成)が運用に就いてます。2+3列シートの着席重視構造の低床仕様。欧州では評判が分かれるイタリア製ですがここフィンランドでは一定の信頼を勝ち得たようです(ただし次の新製はシュタッドラーになったけど)。↓

(写真:Hiekkaharju、2019.3)

日中は1ユニットか2ユニットで運行される列車が多いですね。ラッシュ時は3~4ユニットで運行されてます。最大5ユニットまで組成できるようですが実走は見たことないです。↓

(写真:Hiekkaharju、2019.3)

車両は低床にするため必要機器の一部は屋根に積んでいます。なので横から見るとなんかバランスが取れてないようなヘンテコな感じ・・・↓

(写真:Hiekkaharju、2019.3)

このSm4、車両数としては少な目も頻繁に走ってるので被写体としてはちょっと物足りない・・かな。↓

(写真:Tikkurila、2019.3)

こちら、一番新しい車両の「Sm5」。スイスのシュタッドラー・レールのフリートシリーズ。同じ北欧ならノルウェーでも走りますね。ヘルシンキ・バンター空港直下に乗り入れているため海外旅行者は一番最初に見るフィンランドの鉄道車両かな。この路線、特別料金も取らないし、ダウンタウンへ直結なので便利。ゾーン制の1日券(空港が入ってるゾーン)に収まるのでヘルシンキ観光にも使えるんです。乗り継ぎ時間が長ければ一旦入国してぶらっとヘルシンキ観光できちゃいます。↓

(写真:Lentoasema、2018.11)

このSm5タイプ、同一形式でも導入時期でカラーリングが違う車両がいます。↓

(写真:Lentoasema、2018.3)

パープル系のカラーを纏っているのが現在の標準色。実はオペレーターはVRも運行計画や運賃徴収はヘルシンキ市(HEL)、車両調達などはPääkaupunkiseudu Junakalusto社でこれはVRとヘルシンキ市など行政が株主になった三セクみたいな会社。で、車体カラーはHEL-通勤電車色を纏うというややこしいもの。まあ利用者側にとっては色はどうでもいいかもね。↓

(写真:Hiekkaharju、2019.3)

導入当初はVRカラー、VR本体と区別するために青線が入ってました。その後HEL色が入ってきても特に塗り替えるなどなく普通に走ってます。↓

(写真:Hiekkaharju、2019.3)

「Junakalusto」のロゴつき車両もあります。初期導入車かな。↓

(写真:Hiekkaharju、2019.3)

利用者側としては車体色よりも系統番号が大事。正面LEDに番号表示があるのでそれで行先を区別しています。↓

(写真:Tikkurila、2018.11)

こんな感じでルール性なく共存。↓

(写真:Helsinki、2018.3)

Sm5もSm4と同じく低床仕様。デザイン性があがり側面から見ても違和感ないですがドア位置はかなり低いところにあります。Sm5は旧型のSm1と2の置換で導入されましたが、残るSm2の置換として追加導入が予定されています。前回導入から時間が経ったので次はデザインが変わるかもしれませんね。つづく・・・↓

(写真:Tikkurila、2019.3)