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   Page Start 2006.11.23 最終更新日【2011.5.20】  

クイーンズランド州の鉄道概要

オーストラリアのクイーンズランド州はオーストラリア大陸の東北部分、オーストラリア大陸の4分の1を占める大きい州です。日本の国土の4.6倍もあります。州の海岸付近は地中海性気候、北部は熱帯雨林が密生するジャングル、内陸部はサバンナ的な乾燥地域となっており、気候の変化に富んでいます。

州都はブリスベンで、シドニーを州都とするニュー・サウス・ウェルズ州との境に近いところにあります。観光地で有名なゴールド・コーストはブリスベンの南75kmにあり、また日本人に人気のリゾート地ケアンズもこのクイーンズランド州北部にあります。ちょうどブリスベンとケアンズまでの沖沿いがグレートバリアリーフと呼ばれるエリアです。特にマッカイ周辺のサンゴ礁の島々には高級ホテルが点在し、美しい景色の中ゆったりできるリゾートとあって世界中のエグゼクティブが集まります。州内東海岸のあちこちで走るケイントレイン

さて、クイーンズランドの鉄道ですが、鉄道は州が運営する「QR」(Queensland Railway)がそのほとんどを担っています(⇒RAILMAP参照)。路線延長も10,175Kmとオーストラリアの州の中では一番距離のあるところです。鉄道の構成は東海岸沿いにブリスベンからケアンズまで幹線として南北に路線が延び、この幹線からそれぞれ内陸に向かって何本かの線が延びる構成になっています。州都ブリスベンでは鉄道網が発達し都市交通としてその役割を果たしていますが、それ以外は基本的に貨物専用鉄道という感じです。

このほかにもクイーンズランド州にはアジアで廃止が相次いでいる製糖鉄道(サトウキビ列車:CAIN TRAIN)もバリバリ現役で運行されています。観光地のケアンズにも町を縦貫する路線を持っています。また保存鉄道や観光鉄道もいくつか存在します。


QR

 →詳細QRネットワークマップ

オージーらしさ漂うQRの女性職員 「QR」はQueensland Railwayの略語で、クイーンズランド州が100%株式を所有する鉄道公社です。他の州では民営化が進んでいますが、クイーンズランド州では州内の保存鉄道や製糖鉄道などを除きすべてQRが運営管理しています。日本のような電車らしいところは「CityRail」と呼ばれる州都ブリスベンの近郊電車の区間だけで、基本は鉱石運搬を中心とした貨物鉄道であって、その運行の合間を見て「QR Travel Train」と呼ばれる州内長距離旅客列車が運転されています。

またQRはオーストラリアで一番電化率が高く、電化区間約2500kmと路線の4分の1が電化されており電気機関車も持っています。また長距離輸送を電車で行っているのもQRだけです。他は州都の都市部のみの電化に留まっており、南オーストラリア州はアデレードのトラムとトラム博物館だけ、首都キャンベラのある連邦テリトリー(ACT)とノーザンテリトリーには電車は走りません。

QRの軌間は日本と同じ1067mmで、南のニューサウスウェールズ州の1435mmと軌間が異なります。ブリスベン/ローマ・ストリート駅にはシドニーからの長距離列車が発着しますが、ローマ・ストリート駅~レガッタ駅の3条軌道区間を除きQRと並走するだけで路線としては完全に独立しています。貨物輸送も軌間が違うため直通運転できず、荷物の積み替えを行わないといけません。もともとオーストラリアの鉄道は州がおのおので建設を進めたため軌間がバラバラで、その不便解消にと各州間の軌間統一の話がよく出てくるのですが、ここクイーンズランドにおいては改軌してまで統一しようという空気はありません。

内陸から運び出される石炭は長大編成に組まれ24時間運転される その理由は内陸部を東西に横断する路線がないため州内だけで完全独立できる構造になっていること、また、クイーンズランド州各都市からオーストラリア各地への物流は船でもよく、直通運転の列車が必ずしも必要というわけではないこと、州都ブリスベンが南のニューサウスウェールズ州との州境が近く、南東端のブリスベンから北へ西へと路線が延長されていったため州内で物流が完結することもあげられるでしょう。

さて、QRの鉄道のほとんどは鉱山からの鉱石運搬が主たる役目であり、ブリスベン近郊を除きその上に申し訳程度に旅客列車が走るという構造になっています。州内の貨物列車も都市間輸送というより内陸部からの鉱石運搬が中心で、内陸へ延びた路線のほとんどで石炭、亜鉛などの鉱石運搬が行われています。オーストラリアの石炭の大半はクイーンズランド内陸部から出炭されており、各鉱山からグラッドストン、ヘイ・ポイント、タウンズビルズといった東海岸部の港へ長大編成の列車で運ばれ、世界各地へ船積みされていきます。意外と木製鉄橋がところどころに残っている

このうちグラッドストンやヘイ・ポイントのヤードは巨大で、石炭埠頭がいくつかあって次々と列車が到着し長大編成の列車がさばかれる光景は圧巻です。運転本数も多く、各鉱山から列車が集まるグラッドストーン~ロックハンプトンでは1時間に1~4本くらいの設定で昼夜、休みに関係なく運転されています。

また、コンテナ列車はケアンズからブリスベンまでの主要都市を結び1日数往復の設定があります。南北縦貫路線ではQRが運行するものとナショナル・パシフィック社が運行するものとがあります。また内陸幹線(チャールビルやロングリーチ、マウント・アイサへの路線)へも、内陸都市部への生活物資や農産物、また鉱山からの精錬粗鋼などを運ぶ物流ルートとして運行されています。

また、各列車とも機関車が箱型の新しいハイパワータイプのDLへ置き換えが進み、コンテナは主に単機で、石炭列車は重連で運転されます。電化区間ではELとDLが共用され、ELが使われるのは大量の石炭輸送が必要なグラッドストーン~ロックハンプトン~ブラックウォーター~エメラルドとブラックウォーター~グーニラ~ヘイ・ポイントが中心となっています。ただ、グラッドストーン~ブリスベンの区間は電化されているますが最近ELは使われていません。JR四国の8000系似た顔つきのティルトトレイン

旅客列車はブリスベン近郊のCityTrain部分でフリークエンシーの電車運行が行われるほかは、長距離列車はDLが牽引する客車列車、振り子式の電車とDCプッシュプル客車、一部DCカーが使われています。

QRの長距離旅客列車はそのほとんどが観光用といってもいい感じです。運転も隔日運転や週1日運転などその運転頻度も通常の旅客扱いとはいえないほどぐっと減ります。ブリスベン~ロックハンプソン間の各都市間乗降に限ってビジネスユースがあるくらいでしょうか。このビジネス客が見込める区間には「Tilt(ティルト)」と呼ばれる振り子式電車が高速運転され、ブリスベン~ロックハンプソンに区間運転あわせ平日3往復が設定されています。

外観がJR四国の8000系によく似ており、最高速度は170Km/hまでOK、路線も直線化改良されスピードが出せるよう軌道も補強されています。車移動に比べ大きく時間短縮ができ、飛行機がカバーしない中都市の需要を狙います。車内は液晶モニター装備と飛行機並の設備で人気もあり、そこそこの乗車率となっています。電車ティルトトレインにデザイン統一して作られたDC版ティルトトレインただブリスベン~ロックハンプソンを通しで乗ると7時間もかかり、ここにおいては飛行機のほうに軍配が上がります(最近格安航空会社も運行し飛行機のほうが断然お得)。

また電車Tiltとそっくりに作られた振り子式ディーゼル列車のケアンズTiltも週2便ブリスベン~ケアンズで運転されています。機関車で客車を挟み込んだプッシュプル編成となっていて、車輌も座席主体の構成となりますが、内装は飛行機並みの豪華な仕様で、ロックハンプソンから北、ケアンズまでの中都市間移動を狙ったダイヤ構成となっています。

QR最大編成となる旅客列車「サンランダー号」 同じ区間をブリスベンからケアンズまで走るDL牽引列車はサンランダー号と称され、機関車がステンレス車体の客車を牽引します。こちらはほぼ観光列車のイメージが強く、週4日の運転となっています。座席車の他に寝台車や個室の客車も連結され、人気の高い列車となっています。シーズン中の寝台個室の予約はかなり厳しくなります。

このほかの長距離旅客列車も観光色の強い列車がほとんどです。ブリスベンから西の内陸の町チャールビルまでを結ぶウェストランダー号は週2便、寝台車連結のDL+客車の観光列車です。ブリスベンからロックハンプソンを経由して内陸の町ロングリーチへ至るスピリット・オブ・アウトバック号も機関車+客車の寝台列車を組み込んだ観光列車で週2往復の運転。終点のロングリーチからオールドタウンのウィントンの観光がセットされたものがオーソドックスプランです。

荒れた大地を行く「インランダー号」 ケアンズ南のタウンビルズからはインランダー号が鉱山の街マウント・アイサまで980kmの道のりを走ります。DL+客車の編成で、こちらはサンランダー号やウェストランダー号ほどの編成ではなく6両ほどのミニ編成となっています。

ケアンズからキュランダ、マウント・サプライズを経てフォーセイスに至るサバンナランダー号は、旧型DCカー2両のレトロカーを使い、運行は Cairns Kuranda Steam Train Limited 社(以前は観光用のSLの運行を行っていた)が行う完全な観光列車です。週1便、423kmの道のりを4日かけて往復します。往復するには途中宿泊が必ず必要となるため、この列車に乗車するには鉄道会社が提供するツアーに参加したほうがいいでしょう。

ケアンズから観光名所のキュランダとを結ぶ通称キュランダ鉄道はQRの運行。こちらは観光コースとあって毎日2往復運転されています。20両ほどの長大編成のレトロ車輌が特徴で、途中の景勝地「バロン滝」では見学のために上下どの列車も10分停車します。

DCカーの後ろに客車を連結した古豪列車「ガルフランダー号」 究極の列車は線路が独立して存在する、州北西部ノーマートンとクロイドンを結ぶガルフランダー号。サバンナ状態のユーカリ林の原野の中を、オンボロDC+客車が週1便運行さています。この鉄道に辿り着くのはたいへんで、ケアンズからでも車で2日かけないと辿り着けず(無理すれば1日でも可能だけども・・・700km以上走行)、さらに半ダート道(車線付近だけ舗装しているオージーらしい道)が多いので運転はたいへんです。さらに週1便とあって、攻略するには手ごわい鉄道となっています。


保存鉄道・観光鉄道

クイーンズランド州にはブリスベン周辺を中心に保存鉄道がいくつかあります。またブリスベン周辺の観光地にはミニ汽車などの遊戯鉄道が存在します。

まず保存鉄道としては、ブリスベン西の郊外にあるローズウッド(Rosewood)から北へ入ったところにあるローズウッド鉄道(Rosewood Railway)。週末の隔週限定で列車運行され、レトロDCが廃線上を走ります。ブリスベンの北、カブルチャ(Caboolture)西にあるThe Durundur Railway では、ナローの1kmほどの路線でミニSLが隔週日曜日に走ります。

ブリスベン北部、サンシャインコーストの北にある都市ギンピーからは、廃線利用のマリー・バレー保存鉄道(Mary Valley Heritage Railway)が走ります。ここはSL運転が有名で、周辺の観光コースにも組み込まれて盛況の路線です。路線の両端には転車台を備え、機関車が往復とも前向き運転ができるようになっています。ほぼ毎週水・日曜日に運転されています。また最近は旧型DLのショートツアーも始まりました。

ブリスベン南部の郊外のビューデザートにも保存鉄道ビューデザート鉄道が最近までSL運転を行っていましたが、こちらは財政破綻となって2004年8月以降運転されていません(すでに実質廃止)。クイーンズランド州で本格路線での恒常的なSL運転はマリー・バレー鉄道だけになりました。

中部ロックハンプトンには2つの保存鉄道があります。1つは貨物列車の路面走行が見られる市内デニソン・ストリート(Denison St.)沿いにあるアーカー・パーク駅・蒸気トラム博物館(Archer Park Station and Steam Tram Museum)。特定の日曜日に本線上にトラムを走らせます。

ロックハンプトンから南西に40kmのところに位置する鉱山の町、マウント・モルガンにはマウント・モルガン・歴史鉄道複合体(Mount Morgan Historic Rail Complex)が運営するマウント・モルガン鉄道があります。休日を中心に廃線を利用して運転されています。

カランブン・ワイルドライフ・サンクチュアリの園内を走るミニ列車 北部では、ケアンスの西のアサートン高原の町レーベンシューにSLの保存鉄道 ラベンショー鉄道(Ravenshoe Railway) があり、毎週週末に約10Kmの短い区間で運転されています。またケアンズの北、リゾート地のポート・ダグラスにはサトウキビ鉄道跡を利用したバーリー・ホーリー観光鉄道があり、毎週日曜日にかつてサトウキビ鉄道で使われたSLを使って列車が運転されています。

一方、観光鉄道のほうは、遊園地や公園を主とした鉄道がいくつかあります。わかる範囲では、有名なのがゴールドコーストの「シー・ワールド」にあるモノレール。観光ガイドの挿絵なんかに必ず出てくるやつです。サーファーズパラダイス南のブロードビーチには、コンラッド・ジュピター・カジノとオアシスショッピングセンターを結ぶ「ジュピターズリンク」というモノレールがあります。ゴールドコースト北西、クーメラにある動物園と遊園地がいっしょになった「ドリームワールド」にもミニ汽車が走ります。ゴールドコースト南にあるカランビン自然動物公園には園内をまわるミニ汽車が運行されています。途中カンガルーやエミューを間近で見ることができ、なかなかおもしろいです。コアラも抱かせてもらえるのでぜひ立ち寄ってみましょう。

ブリスベン北のナンブアあたりにあるビックパイナップル・サンシャイン農場には園内を回るミニSLが運行されています。このあたりにはつい最近までクイーンズランド最南端のサトウキビ鉄道が走ってましたが現在はトラックに変わってしまっているようです。踏切など遺構がたくさん残っています。


鉱山鉄道

クイーンズランドの鉱山鉄道は1ヶ所(坑道や鉱山内部軌道は除く)で、西オーストラリア州のような巨大な鉱山鉄道はありません。主たる鉱山をQRがカバーしているため、鉱山鉄道としては発達していません。

唯一の鉄道はクイーンズランド北部、角になったケープヨーク半島の西側、カーペンタリア湾に面したウェイパ(Weipa)にあるボーキサイト運搬鉄道で、鉱山から積出港までの約30Kmの短いものです。平日のみで24時間運転で20両の貨車を率いていったりきたりしています。ウェイパへはケアンズから飛行機が1日数便ありますが、陸路ではダート道を何百Kmも走らなければならないたいへん不便なところにあります。


製糖鉄道(Cane Railway)

クイーンズランド州の東海岸部分はサトウキビの一大産地でところどころに広大なサトウキビ畑が広がります。栽培は温暖な気候を利用して年間を通して行われており、ある単位の塊(大きな川や山地が境界線)で製糖工場が設けられています。その工場とサトウキビ畑を結ぶ役目をするのが製糖鉄道(サトウキビ列車;CainRailwayと呼ばれている)で、アジア各地では路線廃止が続いている中、ここクイーンズランドでは路線の設備増強が行われるほど発達しています。

工場からハブ状に線路が伸び、各エリアごとに列車の収集ポイントが設けられ、刈り取り→トラック→列車→工場という合理的な輸送形態がとられています。工場の生産工程を鑑み、集荷トラックや列車をGPSで管理する、合理的な運用がなされています。これはさとうきびは収穫してすぐに製糖しないと品質が劣化するため、リアルタイムで管理できるよう、コントロールするためです。また鉄道を使うのも大量輸送が可能で往々にして街中にある工場周辺にトラックの往来が集中しない工夫でもあります。

QLDの製糖鉄道は1社を除きすべて610mmのナロー軌道で統一され、総延長4000km、約250両のDLを抱える大規模なものとなっています。どの路線も草や土に埋もれたようなヘロヘロ路線が中心ですが、路線が集まる工場周辺や幹線になるところはコンクリート枕木で路盤強化していたり、交通の妨げにならないよう立体交差の高架橋まで設けられたところもあります。機関車は日本で入れ替えなどに使われている小型のものが中心で、オーストラリアで製造された車輌が使われています。近年は環境対策として内燃DLから蓄電池式DLへの切り替えが進むと見られています。 路面電車のケイントレインも存在

さとうきび列車は収穫時期の6月~12月を中心に運転され、土日も運転、24時間運転というヘビーなところもあります。基本は刈り取ってすぐ(厳密には少し寝かす)砂糖に加工するのがいいため、在庫を持たないよう、計画的に畑の管理をして作付けローテーションを行っています。刈り取り場所をそのときどきで判断して管理するため、需要に応じたすばやい収集が必要で、24時間運転のような形態がベストのようです。畑自体が工場のラインの1つのような管理の仕方をしています。

現在、製糖鉄道は製糖工場を中心に、南はバンダバーグ周辺からロックハンプトン、マッカイ、ケアンズを経て最北モスマンまで、22ヶ所の製糖工場で管理されています。一部では工場閉鎖や統廃合で路線縮小など行われましたが、製糖産業は依然さかんで今後も安泰といえるでしょう。




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