解説

国鉄マハーチャイ線はバンコク中心部の西、チャオプラヤ川西側のウォンウィエン・ヤイ(วงเวียนใหญ่Wongwian Yai)から西へ伸びる路線で、全長30km強、ターチン川沿いの郊外の町、マハーチャイ(มหาชย Mahachai)までを結びます。この路線はターチン川を越えたメークローン線とセットになっていて、終点のマハーチャイ駅とメークロン線バーンレーム (บานแหลม Ban Laem)駅の間はフェリーが接続します。

管理上はマハーチャイ線とメークローン線セットで「メークローン線」と分類するようですが、実態は線路が分かれ、色彩もかなり違うことから別々の路線として扱われています。実際もその性格はかなり違ったものとなっています。

マハーチャイ線は1日17往復の列車設定があり、朝は430マハーチャイ始発と早いのですが、夜は2100マハーチャイ着で早くに店じまいします。全線単線非電化路線で、通過する駅などもありますが基本は各駅停車のみの運行となっています。

車輌はステンレス製のタイ国鉄でよく使われている日本製DCで、扇風機はあるものの非冷房車が主体です。いつも暑いので窓だけでなく乗降ドアも全開状態で走ります。シートは汚れにくいようにプラスチック製になっており、またボックス席主体なため雰囲気はかつての日本の113系のような感じです。 車庫はマハーチャイにあり、検車や修理などもマハーチャイで行います。

マハーチャイ線には1両冷房車(帯がブルーの車両)が連結される列車(時刻表に「ป.a」のマークがついている)が5往復あり、乗車するには運賃より割高な冷房車料金(20~25バーツ)を距離に応じて「追加」で払わないといけません(車掌からチケットを買う)。冷房車は冷房車は簡易リクライニングシートになっておりグリーン車みたいな位置づけなんでしょう。

タイ国鉄メークローン線時刻表(2013.5.6改正)


沿線風景

バンコク始発駅のウォンウィエン・ヤイは市場と合体した駅で、タイではよくあるパターンです。細長い敷地に1面1線の構造で 駅舎はなく、市場の道を抜けるとホームがあった・・・という感じです。待合場所も駅の利用者用というより買い物客のたむろ場所みたいで、駅の窓口は ホーム上にあります。改札はなく、誰でも自由に入れます。ホーム脇には焼き鳥屋とかいろんなものを売る店が軒を連ね、なんともいえない雰囲気となっています。

ウォンウィエン・ヤイ駅を出た列車は低層の住宅街を縫うように進みます。なんとなく日本の下町っぽい感じでおもしろいです。2駅ほど進むと田んぼ があちこちに目立つようになってきます。大きなお寺が目に付くワット・シン(วดสงห์ Wat Sing)は最初の交換駅でたいていの列車がすれ違います。列車のスピードはそう速くないので、ほんとうにのんびり旅行という感じになります。

のどかな田んぼと田舎町を車窓に列車は進みます。交換駅はランホー(รางโพธิ์Rang Pho)、バーンナームジュード、コークワイ(คอกควาย Khok Kwai)と続き、どこかしらで列車交換があります。

このあたりはローカル線ならではの車窓が続き、塩田跡やエビなどの養殖池も隣接。もともと低地ということで雨季には冠水する区間があちこちにあります。「千と千尋」の映画に出てきた水の上を走る電車のシーンがありましたが、雨季にはそんな感じの風景を走ります。

そんな湿地帯路線ということもあり路盤が結構ガタガタなのですが、2011年の大洪水の影響で冠水時期が長くなり、さらに路盤が悪化。途中減速区間が多数設定されたため、列車は夕方になるにつれて遅れていくという状況が続いています。予算も支線は後回しとなって復旧工事もタラタラとしか進まず、脱線事故を起こしたら工事する というような対処療法になっているようです。(路盤の悪いところは乗っていてもひっくり返るんじゃないかというくらい左右に揺れます:2013年現在)

終点のマハーチャイ駅はウォンウィエン・ヤイ駅と同じく市場の中に駅があり、とてもガチャついて汚い駅です。内臓やら羽やらバラスト上に散らばり、またプーンとなにやら臭う不衛生な感じです。もちろん駅ホームや待合所エリアはそんなことはないですが、ちょっと何とかならないの?って感じです。まあこれがタイらしいんですが。。。この終着駅は駅舎もちゃんとあり待合室もあります。車庫も併設しているので運転手の事務所も兼ねています。

駅周りは商店街になっており、メークローン線に接続するフェリー乗り場までお店や屋台が続きます。朝方は人がごった返し活気あるところで、フェリー乗り場まで歩いて10分くらいですが結構雰囲気を楽しめます。途中セブンイレブンもありますので外国人でも食料調達がなんとかなります。

この路線、意外と外人が乗っていて、休日にはピクニック的な感じで利用している方も多数いるようです。バンコクから手近な田舎体験ができるので、バンコクで半日自由時間ができるようでしたら、マハーチャイ線往復の旅みたいなことにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。乗車券も指差し会話のタイ語を真似て筆談で買えます(タイ語で書いて手渡すと駅員が喜んでくれる)。

また終点のマハーチャイ駅からフェリーでメークローン線の旅行をすることも可能ですが、運転本数が限られるので1日旅行となります。メークローン線の終点メークローン駅は有名な列車が来たら店じまいするという面白い光景を拝めるところ。旅程に余裕があればディープなタイを体験してはいかがでしょうか。


撮影ポイント

どこか好きなところで・・・という感じでしょうか。ただし乾季の終わり時期は暑く、駅の周辺のみで軽く撮影するくらいのほうがいいでしょう。沿線にはスラムはないですが、マハーチャイのフェリー乗り場近くの公園付近には怪しげな人もいますので気をつけましょう。


旅メモ

マハーチャイ線だけなら半日旅行で訪問できますので、ちょっとした冒険旅行にはお勧めです。なお沿線沿いにある水上マーケットへは列車でいくと入口がわからなくなりますのでツアーに参加されることをお勧めします。

ウォンウィエン・ヤイ駅までは中心部からだとBTS利用が便利。BTSのウォンウィエン・ヤイ駅と国鉄駅までは少し離れていて歩いて10分はかかりますので注意。Googleマップで事前に確認しておくといいでしょう。路地の近道と歩道橋を使うのがポイント(信号があまりないので)です。

ウォンウィエン・ヤイ駅乗り換え歩き方マップ(Google)

※メークローン線西線は軌道の改修工事のため2015年5月13日(水)から全列車運休となっていましたが、2016年4月1日より運行が再開されました。

PHOTO GALLERY

■Wonwien Yai (วงเวียนใหญ)่

・ウォンウィエン・ヤイ駅の入り口はちょっとわかりにくい。でかい看板あるんですがさらにでかい広告看板が邪魔で見えにくいんです。

      -2013.2.9

・どこかのお店に入るような通路がホームへのアプローチ。待合室はオープンスタイルで、市場の買い物疲れの人や老人の憩いの場のようになっています。この待合所を越えた右手に乗車券販売の窓口があります。

    -2004.8.1   -2013.2.9

・始発列車の時間もひとはチラホラ。一番列車がやってきました。

         -2013.4.20



・朝は市場に入りきれない売り子で道路まで店が広がります。

       -2013.2.9



・列車がやってきました。

         -2013.2.9



・始発駅ウォンウィエン・ヤイは1線1面の細長い駅。市場の買い物客と乗降客でぐっちゃぐちゃ。この塗装は現在消滅しました。

      -2004.8.1


・列車がいないときホームは単なる買い物ロードへ変貌。

   -2004.8.1



・列車がいないと市場への通路みたいになっちゃって様にならないんです。

       -2013.2.9



・ホームはまさに屋台の道路。朝から焼き鳥全快でいいにおいが立ち込めます。

     -2004.8.1



・暑いので列車の窓はドアまでも全開。冷房車が普通の時代になるまではもう少し時間がかかりそう。

     -2004.8.1



■Wonwien Yai(วงเวียนใหญ่)~Talat Phlu(ตลาดพลู)

・ウォンウィエン・ヤイとタラートプルーの間は道路わきのきわめて悪い路盤を走ります。走行中の列車は左右に揺さぶられます。

     -2013.2.9

・ちゃんとした踏み切りは途中の1箇所で有人踏み切り。

   -2013.2.9



・ヘロヘロレールを列車はやってきます。廃線跡みたいな線路で大丈夫なんでしょかね。

     -2013.2.9





■Talat Phlu(ตลาดพลู)

・タラートプルー駅は駅舎もある有人駅。地方私鉄の駅のような感じですね。

        -2013.2.9

・列車が到着しました。すでにもう遅れているのでお客を乗せてすぐに出発。

          -2013.2.9




■Wat Sai (วัดไทร)

・小さなホームのある田舎らしい駅。駅員がいて列車到着時にはホームに出てきます。駅名標が日本っぽいですね。

    -2004.8.1


■Rang Pho(รางโพธิ์)

・ランポーは交換可能駅。対向列車との行き違いです。踏み切りに列車がかかるので相当待たねばなりません。

     -2013.4.20


■Phrom Daen(พรมแดน)

・プロムデーンは交換可能駅。列車交換駅には基本的に駅員がいます。

    -2013.4.20


■Thung Si Thong(ทุ่งสีทอง)

・次のトゥーンシートーンも交換可能駅。

    -2013.4.20


■Mahachai (มหาชัย)

・車窓に市場が見えてきたらマハーチャイ。ここも市場併設の特徴ある駅で線路面に店が向いているので当然といえば当然の、市場の中の駅になっちゃってます。線路はゴミ捨て場になってとっても汚いです。

    -2004.8.1       -2013.4.20

・ホームも市場になって、さらには列車の前まで!これはやりすぎだろう~。

     -2004.8.1       -2013.4.20



・駅構内は市場に侵されてかなり駅らしさを失いつつありますね。

        -2013.4.20



・ウォンウィエン・ヤイから列車が来ます。線路の品物どけてと駅員が注意するとなにやら喧嘩。電車さえ通ればいいんだからとか言ってるのかな?なんせレールのガタガタさ見たら安全運行なんて言えないもんね。

           10 -2013.4.20

・市場周りを振り返って西側には行き止まり型の車庫があります。まあ車両を突っ込んで置いているという感じですが。

     -2013.4.20


・かつてはマハーチャイ線専用に作られた東急車輛製のRTS型(D12の並びの車両群)もありましたが、今はすでに撤去されています。

         -2004.8.1


・小さな駅ですが機関区の事務所もあって一番の拠点らしい駅です。駅前は小さくぐちゃぐちゃな感じです。ペンキ塗り替えで昔から雰囲気変わってます。

     -2004.8.1     -2013.4.20




□Mahachai (มหาชัย)ターチン川フェリー乗り場

・マハーチャイ駅を出て右手に進んで商店街を抜けるとターチン川フェリー乗り場にたどり着きます。ここからメークロン線バーンレーム駅側に渡れます。マハーチャイ側から見て川に向かって右手にバーンレーム駅があります。

      -2004.8.1  -2013.4.20


□Mahachai (มหาชัย)ターチン川フェリー乗り場までの風景

・マハーチャイ駅とフェリー乗り場までの間は商店街となっていて一昔前の日本の光景を思い出します。

    -2004.8.1   -2013.4.20


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