解説

2001年4月1日付で廃止となった下北交通大畑(おおはた)線は、青森県むつ市のJR大湊線下北駅から分岐して下北半島を北上し、大畑地区までを結んでいた路線です。もともと大間にあった旧海軍基地との連結のために作られた鉄道で、大畑から先は大戦激化で建設が中断し、大間までの未成線が今もところどころ残ります。

さてこの下北鉄道の前進である国鉄大畑線は、国鉄赤字ローカル線の1つとして廃止対象にノミネートされ、民間のバス会社、下北バスに引き継がれた路線です。このとき下北バスは鉄道経営参画ということで下北交通と社名変更し、1985年7月1日付けで下北交通が誕生しました。

国鉄赤字ローカル線から民間企業へ経営譲渡されたケースはこの大畑線と、同じ県内にあった黒石線(弘南鉄道が引き継ぎ:現在廃止)のみとなっています。

使われていた車両は、当時大畑線で使われていたキハ22を国鉄から3両譲り受け、ワンマン改造と塗装の変更など行いキハ85として導入。民間への鉄道譲渡ということでコストを意識し、新車の導入は廃止まで行われませんでした。

さて路線ですが、起点である下北駅はJR下北駅と兼ねたつくりとなっており、ホームにその違いがわかるよう別の表現をしていました。駅舎の隅っこに小さな専用窓口があり、そこで切符類をさばいていました。

構内もやや広い感じがあってもともとレールはJRと繋がれていましたが晩年1線1面のみの終着駅のような使われ方をしていました。また、国鉄時代は列車の発着は大湊駅からでしたが、民鉄になってからは乗り入れせず、分岐駅だった下北駅発着となりました。そのため大湊線への乗換えが多少不便となり、利用者から不満の声が出ていました。

下北駅を出るとすぐに大湊市街に入っていきます。静かな住宅街の中にある海老川に到着。朝夕の学生利用がメインか、平日日中の乗降は多くありません。

次の田名部は実質の大湊の中心地で、駅舎もしっかりしており、駅前にタクシーも並びます。ただ街中を行く風景はこの田名部までで、田名部を出ると急に閑散とした風景に変わります。

市街をバックに葦の原を横切り、勾配を登りつつ左手に湖(早掛沼)が見えてきます。桜が有名な早掛沼公園が湖畔にあり、シーズン中はあたりに提灯が吊るされます。ただ公園入り口は国道側にあったのでこの鉄道からの利用は不便でした。

恐山をバックに行くキハ85 湖を見て左にレールが曲がると樺山に到着。晩年は冬期は休止される駅でさみしいところにありましたがちゃんと待合室を兼ねた駅舎がありました。

丘陵地の雑木林の中を進み静かな風景の中に次の陸奥関根駅があります。勾配を下り集落が見えてきたら川代到着。跨道橋を通る部分で右手に海が開けます。

次の正津川は小さな集落の中にある駅。海に沿って広がる集落を抜け列車は終着駅の大畑に辿り着きます。大畑駅前はバス乗り場が整備され、終着駅らしい風格がありました。車庫は大畑に設けられており、駅舎が会社事務所を兼ねていました。

現在、路線跡は鉄橋や橋など撤去されたりしていますが結構残り、終点の大畑駅は大畑線キハ85動態保存会によって構内全部が保存されています。使われていた気動車3両もそのまま動態保存され、うち1両は国鉄急行色に塗り替えられ、特定日に構内で運転されています。

PHOTO GALLERY

■下北

・もともと大湊線との乗換駅であった下北駅は民営化後すぐはまだ仕切りなどもなく、国鉄時代と変わらぬ風景でした。

   -1986.3.12

・晩年は仕切りもでき、独自色を強めた形となりました。大畑に車庫があったのでこちらのほうが終着駅という感じでした。

    -2001.3.18




■下北~海老川

・下北駅から左へカーブする地点は恐山をバックに撮影できる有名ポイント。

   -1997.11.24

・雪のほうが似合ってますね。

    -2001.3.18



・このあたりから田名部にかけては大湊市街を進みます。

   -1997.11.24




■海老川

・かつては仮乗降場だった駅。

   -2001.3.18



■田名部

・もとは大湊の中心地で乗降客も多かったのですが晩年はかなりさびれ、国道バイパスの沿線のほうがにぎやかになってしまいました。

   -2001.3.18



■田名部~樺山

・早掛沼の堤防道路や早掛沼公園から手軽に撮影できるポイントとして有名だったところ。田名部側は湿地帯のような雰囲気のところを走るので逆光にはなるものの感じいい写真が撮れました。

     -1991.11.6   -1996.8.1

・開業10周年にはイカの奇妙なヘッドマークをつけて運行していました。

     -1995.8.13



・秋はなぜかとてもさびしい風景となるところでした。

      -1997.11.24



・早掛沼公園から。ここでは青い湖面に青い空の写真が撮りたかったのですが結局取れずじまいでした・・。

    -1997.11.24



・凍てつく早掛沼。ダークな空とモノトーンの風景にこの車両は映えます。

      -2001.3.18



・雪景色になると表情ががらりと変わります。

    -2001.3.18




■樺山

・周りには人家もなくさびしい駅。なんとなく人里はなれた東北らしさがいい感じでした

      -1997.11.24

・雪景色もお似合い。

   -2001.3.18




■樺山~陸奥関根

・晩秋の風景はうら寂しい感じで旅情がありました。

    -1997.11.24


■陸奥関根

・小さな駅でわずかな人が乗り降りします。

     -2001.3.18


■陸奥関根~川代

・海が一瞬開けて見えるところ。この鉄橋の関根側で望遠で海をバックに撮れるところがありましたが狭くて晩年撮れずじまいとなってしまいました。

    -1997.11.24


■川代

・1線1面の小さな駅。侘び寂びの風景です。

   -1997.11.24    -2001.3.18


■川代~正津川

・防風林の中を線路が進みます。

     -2001.3.18

・ほんの少しだけ陸奥湾をバックに撮れるところがありました。

   -2001.3.18



・上の少し先。

   -2001.3.18




■正津川

・小さいながらも冬の防寒対策として待合室は必ず設けられていました。

    -2001.3.18

・夕暮れになると風景はうらびれた感じが漂います。

    -2001.3.18




■大畑

・国鉄時代の大畑はザ・終着駅という木造駅舎でしたが、下北交通になってから駅舎は改装、車庫も設けられ少し近代的な感じとなりました。

    -1985.3.12

・本州最北端の駅も今はJR大湊線下北駅にその座を譲り渡しました。

    -1997.11.24



・最後までキハ22が残り、国鉄らしさが味わえました。

     -2001.3.18



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