解説

大分鉱業(株)徳浦運搬線は、大分県津久見市内にあった鉱山鉄道で、1067mmの軌道で全線電化され、交換施設も2箇所ある立派なものでした。運ぶ鉱石は石灰石で上青江の採掘場から徳浦にあった積み出し港までを結んでいました。

ここの魅力はなんといっても凸形の電気機関車でしょう。EL+貨車数両+制御付貨車という編成で3編成が組まれ、海側に機関車固定で深夜以外フル稼働で運転されていました。日中は2回の休憩があって、鉱山側交換施設にはずらっと3編成ならぶ光景が見れました。

当時このシーンは事務所で許可を得ると撮影させてもらうことができました(大分鉱業さんの担当の方はとても親切であたたかく接していただきました。)。

採掘場からの鉱石積み込みは石の種類によって2つに分けられていました。列車1:2の割合で積みこまれていたと思います。積みこみはトンネル内で行われ、2つのトンネルのどちらかから列車が出てくるおもしろい運転をしてました。

積み出しトンネルから出た列車は鉄橋をわたると大きくカーブし最初の交換施設で列車交換、その後は切りこみの中やトンネルを走りあまり地上に出てきません。長いトンネルを出て県道を跨ぐコンクリート橋を渡ると2つ目の交換施設。列車交換が終わるとすぐに終点です。ここで砕石をおろし、再び積みこむために戻って行くことになります。

津久見周辺はセメント原料となる石灰石の採掘場が数多くあり、かつてこの徳浦運搬線のような鉱石を港まで運ぶ鉱山鉄道がたくさんあったのですが、順次ベルトコンベア-化され、最後まで残っていた大分鉱業も合理化の一貫で99年に徳浦運搬線のベルトコンベアー化が決定、予定どおり2000年度内の切替となってしまいました。 休憩時の3編成並びは有名。「自由に撮っておいでよ」とヘルメットを貸してくれての撮影でした。

ただ、採掘場のある山の中腹の上部軌道はそのまま残っており、こちらは現在も小さなELがエンドレスループの軌道を走っています。その様子はふもとからでも確認することができます。

以前はこの上部軌道も総務の方にお願いしておくとあるタイミングで見せてくれた(だったと思いますが・・・失念。訪問したとき明日なら見せてあげるよと言われました)のですが、何かのトラブルがあって以降、一般への開放はやめているみたいです。ま、特別列車運行時の撮影マナー見てればなんとなくトラブルになるのはわかりますねぇ~、廃止前にもめなかったのが奇跡です。

PHOTO GALLERY

■上青江(鉱山)

・正面が上の鉱山からの砕石積み込み場。見えにくいですが2つトンネルがあり、進入するトンネルがどっちかの矢印信号がついてました。

    -1999.5.22

・全体の構造がわかる写真。山の中腹に発着する上部軌道から砕石が落とされ、列車が進入するそれぞれのトンネルに落ちる構造になってました。ベルトコンベアの工事がすでに始まっており、真新しいコンベアも見ることができました。。

   -1999.5.22



■上青江(鉱山)~上青江交換所

・積み込み口を出るとすぐに県道204号線との踏切がありました。今は県道を跨ぐように高所にベルトコンベアが走ります。

    -1999.5.22

・青江川鉄橋を渡るところ。カーブのレール摩擦音を減らすため運行時は四六時中、散水されてました。

        -1999.5.22



・上流側からの青江川鉄橋。すでにベルトコンベア工事がスタートし、鉄橋周りはきれいな写真が撮れなくなっていました。

     -1999.5.22



・鉄橋を渡ったところの大カーブ。撮影ポイントの1つでした。

       -1999.5.22



・国道バイパスからの俯瞰。

    -1999.5.22




■上青江交換所

・交換用に2線と1本の側線があり、日中2回の休憩時と運転休止時はこのような並びになりました。撮影前に事務所で沿線の撮影の許可をもらいに行くと、「3台並びの写真が撮れるからお昼前に来なさい。入らせてあげるよ。」 窓口になった兄さんの言葉に甘え、撮らせてもらったものが以下の通り。ヘルメットをかぶって写真を撮ったのを覚えています。

    -1999.5.22

・機関車も目の前で触れました。昔は機関車に乗せてもらうこともできたようですがいろいろあって難しくなったようでした。ELはすべて日立製、ED201、202、203の車番でそれぞれ外観が微妙に違っていました。ちなみに機関車に向かって左から2、1、3で並んでいます。

       -1999.5.22

・こちらは貨車最後尾の運転台付側。ELは運転台付貨車の番号と同じ末尾の1→201、2→202、3→203がついています。運転台窓がそれぞれ微妙に違うのも面白いですね。3番車はこれ、住宅用サッシじゃん。

       -1999.5.22

・鉱車も日立製。昭和38年から重たい鉱石を運んで現役とはかなり手入れもしっかりしていたんでしょうね。

    -1999.5.22

・運転時はこんな感じで単なる交換所となります。北側(右端)の線路が行き止まりの側線構造になっているのはベルトコンベア工事のためだったのか、もともとそういう構造だったのかはわかりません。

   -1999.5.22

・交換所の海側はすぐトンネルになってましたが、その上を走る公道から何とか交換風景を収めることができました。

     -1999.5.22

・徳浦に向けて出発。満載の砕石を運びます。

   -1999.5.22



■上青江交換所~徳浦交換所

・上青江から徳浦の交換所まではほとんどトンネルを走ります。わずかに途中出てくるところは県道とJR線路、高速で高架がごちゃごちゃになってたあたりでした。

     -1999.5.22

・ここは徳浦交換所すぐ近く。新しく作られた県道217号線から手軽に撮影できるポイントでした。後ろの廃墟は昔の採石場跡。バックの山の向こう側がちょうど日豊本線徳浦信号所があるあたり。

      -1999.5.22

・別のアングルでトンネルから出てくる・入っていくシーン。

       -1999.5.22

・真横から見た鉱車。巨大なナベトロって感じですね。貨車には車番が打ってますが・・・見えにくい。運行は2名体制で、港行きは機関車に2名が、山行きには貨車後尾の運転台に1名、機関車に1名となります。

    -1999.5.22

・これはED201。ELの貨車側にBOXがついているのですが、砕石の積み下ろしに目視確認で使っていたのでしょうか。運行時は使ってませんでした。

   -1999.5.22



■徳浦交換所

・ここは事前に許可を取って近くで撮影させてもらいました。上記トンネル出たところすぐのところに交換設備がありました。

       -1999.5.22



■上部軌道

・ふもとから見上げるとこんな感じで見ることができました。確かループ線になっていてグルグル山を回っていたかと思います。

      -1999.5.22

・バイパスからだとこんな感じ。今も動いているのでこれくらいの距離だとみることができます。ただし平日しか動いてません。

    -1999.5.22



■上部軌道(2011)

・最近大分訪問で採石場前に立ち寄ってみると上部軌道は変わらない風景・・・なんか増築されていますね~。下部軌道はベルコンが巨大にそそり立って当時の面影はまったくなくなってました。

    -2011.7.2

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