解説

山形県日本海側の庄内エリア、鶴岡の西にある羽前水沢駅には隣接する化学メーカー「水澤化学」とつながる専用線がありました。酒田港の専用線群がなくなってからは、離れ小島のようにポツンと残る専用線だったので、訪れるのに難儀する方も多かったと思います。

専用線は羽前水沢駅と並行してレールが敷かれており、一見駅ヤードの延長線にあるような構造です。基本平日のみ運転で、土日祝日、年末年始・お盆休みとサラリーマン泣かせの運行形態でした。

扱う荷は活性白土と酸性白土がメインで、枠が決まっているのか基本コキ3両で、西側2両がコンテナ、東1両が専用タンクでした。専用タンクは活性白土専用のタンクコンテナで企業イメージカラーのブルー一色の一目でわかるタンコで今も引き続き使われいます。

活性白土は触媒や吸着材として使われる工業品で、ある特殊な粘土(アルミノケイ酸粘土鉱物:酸性白土)を硫酸で処理し多孔質化して作られます(反応性が増すので「活性」とつけて区別)。この鉱物は庄内から上越地域にかけての日本海側で産出される鉱物で、かつてSLが走る企業専用線があった糸魚川の東洋活性白土(すでに閉鎖)もこの活性白土を作ってました。

水沢駅のヤード線はこじんまりとしており、駅舎から上り線、待避線(中線)、下り線、側線、専用線(荷役線)というレール配置でした。側線は晩年使われていませんでした。

役務は荷役線1本でタンコへの白土詰め込み(ホッパー使用)とコンテナ積み込みを行い、それぞれ別の場所にあるため、移動のためにスイッチャーが必要となっていました。ホッパー側には機関車の付け替え用の入換側線1本ついてました。

スイッチャーは通常倉庫前の定位置に鎮座。スイッチャー自身の入換も行うので着く方向に決まりはありませんでしたね。30t機のブルーの凸型機関車で、予備機はありませんでしたから、定期検査時はどこからかレンタルしてきたのでしょう。



晩年は最大コキ3両での荷役とあって先行き少々不安な専用線でしたが2013年春のダイヤ改正で貨物荷役廃止が決定。しかしトラック化でバタバタしたようで、その後1年強運行され、2014年春の改正で5月末までの運行と決定も、ゴールデンウィーク時にサイロ周りの工事をしたようで2014年4月で運行を終えたようです。


入換風景(2011年夏現在)

羽前水沢には2本の貨物が発着してました。新潟方面行きで出荷コキの引取り、酒田方面行きで返コキの受け取りです。

1240頃、酒田方面からの貨物が到着します。駅の中線にそのまま入ってきます。新潟からのいなほ号をやり過ごした後、ELが単機、または短いコキつきで切り離され上り線へ転線します。

その後、荷役線へELがバックして進入、出荷用にあらかじめ用意していたコキを連結し、さっきの逆で中線へ転線します。元編成と連結して入換完了です。出荷時の入換にはスイッチャーが動きません。1300すぎ、新潟へ向け貨物は発車します。

続けて新潟方から酒田方面行きが到着します。上り貨物同様、中線へ進入。一旦停止後頭につけているコキ3両をそのまま切り離して下り線へ。その後バックで荷役線まで押し込みます。この入換作業中、上りの貨物が通過しますが、作業に影響ないのか黙々と入換が続きます。

荷役線へ置いたコキはそのままとなりELが下り線へ転線。すかさず定位置にいたスイッチャーが動きだします。アイドリングレスのスイッチャーなので目視チェックを怠らずに。

スイッチャーはコキに連結後、空のコンテナを下すべく、コンテナ荷役場所まで少し移動します。コンテナ荷役が終わるとタンコへの活性白土積み込みです。ここではタンコは下されずコキに乗せたままホッパーを使って白土の積載を行います。

コキをホッパー下へ動かすべくスイッチャーの付け替えを行います。ホッパーへは押し込みで入れなければならないので新潟方にスイッチャーを持ってきます。工場内の側線を使って転線し連結、後押しですぐにホッパーへ押し込んでいきます。

ホッパー下につくとさっそく積み込み作業開始。ホッパーからの積み込みが始まると入換作業が終了、休憩タイムとなります。この時点で1400くらいでしょうか。コンテナ量にもよりますがおおむね20~30分の入換タイムとなります。

ELのほうはこうした作業と並行して中線へ戻り、元編成に連結したら発車時刻まで休憩タイムとなります。

次の入換は白土ホッパーからスイッチャー定位置への移動。1600~1630くらいでしょうか、本線列車の運行に関係ないのでホッパーの積み込みが終わったら移動という感じです。わずかだけ動いて終わりとなります。

出荷コキは翌朝午前に入換えてました。以下見てないので推測ですが、9時ごろから入換が行われていたようです。荷役線の関係から、前日満タンコにした青タンココキ編成をスイッチャーで引き出した後、今度は酒田側に付け替えたのでしょう。編成を後押しでコンテナ荷役場へ移動。積み込み作業を行っていくと思われます。

コンテナ荷役は1コキ分しかない狭いスペースなので、2コキ使うときはずらしながら積み込んでいくと思われます。最大6コしか積まないので20分ほどで終わっちゃうと思われます。

すべての荷役が終わったら、そのまま新潟側へ押し込んでELの引取り地点まで進めます。スイッチャーを切り離し倉庫前定位置に単機で戻ったら入換終了ってところでしょうか。

冬場の雪の作業も収めたかったですが、なんせ遠くて不便とあって廃止までに再訪はできませんでした。残念。

PHOTO GALLERY

■時系列:昼出荷入換

・秋田方面からのJR機が到着。写真は羽前水沢の酒田寄りの田んぼの真ん中1直線にある踏切脇から。海コンがしぶく1コキついてます。

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・羽前水沢に到着したらELを切り離して元編成に水澤からの出荷コキ編成をつなぎ込みます。終着駅での解結の手順があるのでしょうか、EL+海コンで頭が分離されました。

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・転線してバックで荷役線へ入っていきます。図体がでかいので扱いがたいへんそう。

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・荷役線コキ編成を連結したら新潟側へ転線のため引き出しです。編成が長くなるので結構先まで行ってしまいます。

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・なので田んぼを行く走行シーンみたいになっちゃいました。

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・バックして元編成に連結。これで入換終了です。この入換ではスイッチャーは動きません。

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■時系列:昼空車返送受け入れ

・かつては酒田港東ソー専用線で使われていたスイッチャー。日中はホーム正面あたりの屋根付き倉庫前で休憩しています。ちなみにこの倉庫前での荷役はありませんでしたね。

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・新潟行きが出てすぐに秋田方面行き列車が到着します。この列車到着と同時にスイッチャーの入換スタートです。列車到着前に詰所から職員が出てきますのでタイミングを逃すことはありませんでした。

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・列車は中線に入って水澤化学向けコキ編成のみを切り離します。頭についている水澤コキを切り離し荷役線へ掘り込むべく転線します。切り離しから荷役線への押し込みはELが直接行います。

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・一旦上り線へ入ってからバックで荷役線へ押し込んでいきます。と同時にスイッチャーのエンジン始動です。

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・グングン押してコキがちょうど荷役線に入りきるあたりでストップ。ちょっと中途半端な位置にELが止まり切り離しです。

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・切り離されたELはすぐに離れて上り線まで移動します。

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・すかさずスイッチャーが移動。

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・持ってきたコキに連結してコンテナ荷役場所へ移動させます。

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・移動後コンテナ荷卸しです。この日は1こだけ。すぐに終了です。

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・同時進行でELが元編成がいる中線へ戻っていきます。

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・コンテナ荷役が終わると今度はタンコ荷役。少しだけ東へ移動しストップ。何するんでしょう?

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・そう、ホッパー線へは貨車を押し込んでいくのでスイッチャーを付け換えなければなりません。頭を付け換えて・・・

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・ホッパー下まで押し込んでいきます。

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・ホッパーにつくとタンクへのつなぎ込み作業を行い、あとはひたすら詰まるまで休憩です。1タンク1回のようで、結構作業時間を食います。1500過ぎまで続きます。

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・反対側、東側踏切からだとこんな感じ。粉が細かいので外に若干漏れ出てます。

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・入換の間ELはもとの編成に収まり出発を待ってます。あっという間の入換でした。

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■その他周辺

・水澤化学東側のすぐの踏切はバックに月山を映しこめるちょっとした撮影ポイント。485はなくなりましたが今も貨物列車はきれいに撮影できます。

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