解説

専用線「海山道」は、JR関西本線四日市駅から延びる塩浜支線から分岐する専用線の1つでした。四日市と塩浜の中間あたりになる近鉄海山道(みやまど)駅に隣接する側線から三菱化学の工場へ伸びていました。

荷は酸化エチレンのコンテナで、鹿島事業所から酸化エチレンを主に運んでいました。四日市に以前あったエチレンプラントをたたんだため残った周辺需要家向けに鹿島からエチレンを運んでいたようです。

さて、この専用線は、側線から分岐し場内まではわずか100数十mだったのですが、踏切3つに1日2往復運転と、しっかりした専用線で、スイッチャーファンにも人気がありました。連絡するJR貨物の列車も、運用縮小が進むDD51牽引とあって、一昔前の風景を堪能できた、ホットスポットでした。

ここは定時運行、土曜日運転と、サラリーマンにとっては撮影しやすいところでしたが、需要家の鹿島移転が決まった晩年は移管に向けた間引き運転となり、最後は週2回の発着となって予定通りの2011年3月末に廃止となりました。東日本大震災や鹿島線での貨物列車脱線事故などもありましたが、年度末まできちんと走ったようです。

ちなみに塩浜支線はこの専用線が廃止され、荷主が昭和四日市石油だけとなってかなりさみしくなってしまいました。南四日市発着のJSR向け列車も臨時列車に格下げとなり、残るは石油と太平洋セメントだけとなりそうです。

現在、側線跡はすべてレールが撤去され、三菱化学への引込み線も撤去。復活することはなさそうです。2台いたスイッチャーの一台は伯耆大山の某製紙工場へ、もう一台は秋田臨海地区の某製紙工場へ再就職しました。


かつての入換風景

ここのスイッチャー運行は四日市発塩浜行のエチコキ列車(251レ)がちょうど海山道側線群を通るあたりからスタートしました。1220~30くらいに鹿島からやってくるエチコキを引き取りにスイッチャーが側線へ出てきます。入換は旧四日市倉庫の日本トランスシティ(通称トランシー)が担当しました。

使われるスイッチャーは2台。緑色のスイッチャーらしいカラーリングで、整備状態がよく、手入れをしっかりしていたのでしょう。

荷である四日市から来るエチコキ編成は海山道では止まらずそのまま塩浜駅まで行ってしまいます。ここの側線は塩浜駅構内扱いになっているからなのでしょうか、列車は一旦塩浜駅を経てこの側線まで折り返してきてました。JRとしては折り返しは塩浜駅での入換という位置づけだったんでしょう。JR機が塩浜から貨車を取りにやってきました。スイッチャーとDD51の顔合わせです。

工場からはこの荷物を受けるために単機でスイッチャーがやってきます。JRの折り返しが来るまでヤード手前で待機です。

折り返し編成が入線してJR機が解結・転線するとすぐにスイッチャーが動きます。荷物の引取は編成のお尻に連結するだけの作業で終わるため、作業が終了するとそそくさと工場へ戻ってしまいます。その後すぐにJR機も単機で塩浜駅へ折り返します。

次に出てくるのは1430前後。空のタンクを鹿島へ送り返すため側線へやってきます。入れ換えはほぼ荷受けの逆の手順で進みます。工場からエチコキを引っぱり側線に編成を留置。スイッチャーは切り離し後転線するために四日市方面へ進みますが側線が長いため結構走ります。

転線後は工場へ続く側線末端でいったん停車。塩浜からやって来たJR機は、仕立てられた編成お尻にくっついてそのまま塩浜へ引っ張っていきます。スイッチャーはなぜかJR編成が発車するのを見届けてから工場へ戻り、1日の作業が終了です。

ここの入換機は通常2タイプが交互で使われ、午前と午後とで使い分けをしていました。構内の配線の関係らしいですが、動力物は動かしておくほうが調子の具合を見れるため、予防保全のためにもよかったのでしょう。

PHOTO GALLERY

■<場内引き込み>

・かつての入れ換えを時系列で。1220頃に四日市からエチコキ列車がやってきます。残り少なくなってきたDD51のカマ狙いに多くの人がやってきました。

      -2010.4.24

・跨線橋の上から手軽に俯瞰気味に撮れるため、ここは撮影スポットとなっていました。この日は重連運用でしたがコキが5両に減ってました。

       -2010.8.31

・跨線橋の下からだとこんな感じ。上のほうがいいですね。この日は国鉄色のDLが頭でした。コキ4両に重連ではDD51としては力が余っちゃいますね。

       -2010.9.3

・エチコキ列車が通過するタイミングで工場からスイッチャーが出てきます。

      -2010.8.31

・最初は荷の受け取りだけなので単機でやってきます。

       -2010.8.31

・工場と側線までの小さなアプローチをやってきます。

     -2010.4.24     -2010.9.3     -2010.8.31

・DLは一旦側線手前で待機。JR機が来るまで小休止です。係員も優しく、撮影者の雑談にも応じてくれたりもします。

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・塩浜からのエチコキ列車のすぐ前に四日市へのスジが1本あり、まずはその列車をやり過ごします。

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・続けてエチコキがやってきました。近鉄名古屋線の横をへろついたレールが走ります。

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・工場への引き込み入れ換えがスタート。といってもかなり簡単。やってきたコキのお尻にスイッチャーが着いて・・・

      -2010.4.24      -2010.9.3

・工場へ引っ張っていきそのまま終了。1250頃に終わりますが、30分ほどの間で結構楽しめます。

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・JR機もすぐに塩浜駅に単機で帰ります。

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■<空コキ返送>

・1425頃工場から空タンクになったコキ編成が出場です。

       -2010.9.3

・町工場の中を進むワンシーン。ちょうど県道との踏切のところですね。

    -2010.4.24

・2回目のDLは色は同じも機種が違います。

     -2010.9.3

・引き出しシーンは跨線橋上からも俯瞰で撮れます。編成が長いと迫力ありますね。

        -2010.4.24

・定位置まで牽引。

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・所定位置に置いたらすぐにDLが転線します。そのまま進んで・・・あれ、えらく奥まで行って・・

      -2010.4.24

・そう、側線が長いので結構奥まで行ってしまいます。戻ってきて・・・

      -2010.4.24

・1回目入れ換えと同じ待機場所へ一旦収まります。

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・しばらくすると塩浜から単機がやってきます。そのまま側線へ入り・・・

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・連結し、引っ張り出して直接塩浜へ向かいます。

    -2010.9.3   -2010.4.24  -2010.9.3

・スイッチャーは一連の作業を待って無事塩浜へ送られるのを見届けて場内へ帰ります。

    -2010.4.24      -2010.9.3

・1440頃、門を締めて今日の作業は終了です。お疲れ様でした。

   -2010.9.3




□<近鉄他>

・そばを近鉄が走るため、待ち時間で好きな写真が撮れます。海山道ホームからもそれなりの写真が撮れます。

    -2010.4.24

・「海山道」は難読駅の1つ。側線出口の反対側は海山道神社へ続く参道が目の前にあります。

    -2011.2.8

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