韓国の鉄道は韓国鉄道省が管理する公社(KORAIL)と自治体が運営する都市地下鉄の2つに分類できます。日本のような私鉄はなく(世界的に見れば日本がめずらしい)、鉄道は基本的に公営です。国鉄については民営化を検討していますが、KTXなど設備面で巨大投資を進めており、当面国が支えなければ経営できないものと思われます。


○KORAIL(韓国鉄道公社)

韓国の鉄道インフラは国土をカバーするようにしっかりとしたものが作られています。大きくは3つのタイプに分けられ、新幹線であるKTX専用線、従来の国鉄路線、ソウル近郊の電鉄線(日本の国電と同じ考え方)と分かれます。KTXは在来線との併用なので、KTX専用線以外は在来線と共通で線路共用となっています。電鉄線は基本的には地下鉄と同じ扱いで、一部区間は緩行線と快速線とに分かれています。

ソウル広域電鉄線 現在も幹線の複線化や電化工事が進められています。ただ、人口の大半が首都ソウル周辺に集中しており、ソウル近郊とソウルと比較的大きな都市の釜山や大邸、太田を結ぶ京釜線、西海側の光州や木浦を結ぶ湖南線以外は本数も少なく、完全なローカル線と言っていいでしょう。特に地方都市へは高速道路が整備され、鉄道利用者は年々減少傾向にあるようです。

現在KORAILの優等列車は大きく3つの車種があり、新幹線相当のKTX、特急相当のセマウル号、急行相当のムグンファ号です。KTXは在来線との併用で、専用区間で高速運転を行います。専用の電気機関車のプッシュプルでフランスのTGVと同じです。車両はセマウル号よりもコンパクトに作られ、車内は少々窮屈です。高速運転時には揺れが大きくなりますが新幹線に比べ静かで、静穏さではKTXに軍配が上がりそうです。

セマウル号 セマウル号はKTX登場前は最速でしたが、現在も京釜線を中心にKTXが通らない地域を結ぶローカル特急として活躍しています。空間的にはKTXより広く、座席幅も大きいので時間がある場合はゆったりできるセマウル号利用のほうが車窓も楽しめていいかもしれません。この列車はディーゼル機関車によるプッシュプル運転を行い、客車を8~12両ほどつないだ大編成を組みます。機関車はセマウル号専用ですが最近は余剰の機関車をムグンファ号の機関車として代替するケースが出てきています。

ムグンファ号 ムグンファ号は地方都市を結ぶ一般的な列車で、ディーゼル機関車が専用客車を牽引するスタイルです。KTX開通により鈍行列車であった客車列車のトンイル号が廃止されてから、ローカル線のムグンファ号は急行というよりは実質快速列車のようになっています。もちろん座席指定で急行としての地位はありますが、京釜線や春川線といった輸送量の多い路線は別として、地方では釜山などの都市近郊列車を除き鈍行列車すら走らない線も多く、また編成も機関車+3両とかのミニ編成でとても急行列車とはいえない状況です。とはいえ、こうしたローカル線は日本同様に旅情が深く、のんびり旅行には最適です。

普通列車は基本は短編成のディーゼルカーで運転され、都市部におけるコミューター輸送の位置づけです。また、南部海側に多い支線用の列車としても利用されています。ちょうど日本のキハ40のような位置づけでこれらは旧型客車主体のトンイル号の置き換えとして大量投入された気動車です。

KORAILに乗車する場合にはすべての車種(ソウル電鉄線を除く)で乗車する列車を指定しなければなりません。特急、急行はともかく、普通列車も必要となっていますが、これは駅の改札時間が指定列車の15分前からというルールがあるためですが、ただの普通列車でもいちいちキップは窓口等で列車指定を受けて買わないといけないのでとても不便です。それに普通列車利用の場合は列車指定だけで座席してはできないので、座席確保のためには改札前で並ばねばなりません(そのためたいてい改札前で行列になっている)。

また、ソウルではKTXやセマウル利用の際も改札時間が出発のギリギリになるので、大量のお客さんで改札が混雑し、ホーム売店で弁当や飲み物を買うのにあわてふためかなければなりません。一般列車できれば事前に買うか、すぐに売店へ行って先に買って席に向かったほうがいいでしょう。

現在、赤字解消のため日本と同じようにローカル線の減便が行われ、いくつかの支線においては廃止検討がなされています。特に南海道の線区は人口も少ないわりに支線が多く、また道路整備も進んでいるためこの先さらに鉄道経営は苦しくなりそうで近い将来の廃止も免れなくなるでしょう。

○各都市地下鉄

プサン地下鉄 地下鉄は現在、首都のソウル、隣接する仁川、中部の都市、太田、大邸、韓国第2の都市、釜山にあります。大邸の地下鉄は放火事件で多数の死傷者を出して有名になりました。それ以来、韓国地下鉄のシートは不燃材への取替えが進んでいます。また古くからあるソウルや釜山では現在車両の置き換えが進んでおり、近代化が図られています。またSUICAやICOCAのようなIC非接触タイプのカードがすでに導入されており旅行者には便利です。

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