解説

伊予三島の専用線はJR予讃本線伊予三島駅から2kmほど川之江方向へ戻った分岐から大王製紙に伸びる企業専用線です。

伊予三島は古くからの製紙の町で、大手製紙メーカーがあちこちに点在します。また製紙から紙袋や加工紙を作る中小企業も多くあり、製紙城下町となっています。

専用線オーナーの大王製紙はティッシュペーパー等で誰もが知る有名ブランド「エリエール」を持つ会社で、ここ三島工場は製紙能力230万トンという、日本一の能力を誇る大王製紙の基幹工場でもあります。(最近はオーナー息子のバクチで有名になりました)

ここの専用線は駅から分岐するのではなく、路線途中の分岐点から枝分かれするタイプで、中越パルプ能町と同じタイプ(能町~高岡貨物の途中で分岐)です。

ヤードは予讃線に並行して作られており、一見貨物駅のヤードにも見えてしまいます。屋根つきコンテナヤードに掲げられた「大王製紙専用線」とデカデカと書いた看板がそうでないことを表現しています。

側線は全部で5本あり、予讃線から北に2本が電化された側線、続いた2本が非電化、残る1本は屋根つきコンテナヤードに入っており、途中入り口までの電化となっています。

スイッチャーは3台いて、王子製紙北王子からやってきた(2014.9.3)青色の25t機「No1」がメイン、黄色の妻面が5窓あるグロテスクなやつが予備機「No2」(かつて赤が黄色になった)、黄色(薄いほう)のいかにも廃車されそうな塗装の15t機がかつての主機「No3」となってます。入換業務は日通が担当しますが、以前は大王製紙の物流部門が運営していたそうです。

入換風景

入換は朝と午後の貨物列車到着時の1日2回行われます。ここの特徴は到着時のコンテナ線への押し込みにだけスイッチャーが使われることです。

朝、10:00ちょっと前にスイッチャーのエンジンがかかります。10:00頃、高松からのコンテナ(3075レ)がヤード脇の予讃線を通過します。そのまま専用線には入れないため、伊予三島駅まで貨物列車は運行します。

伊予三島駅では3番線に入線、すぐに入換を行います。単線で1時間ヘッドで走る特急と普通上下列車の間を縫っての入換のため、あまり余裕がありません。

到着後ELが切り離され1番線を使って転線します。さきほどの編成のお尻にELを連結し、川之江方向へ戻っていきます。ELは入換灯をつけているので、専用線までの運行は入換扱いになってるのでしょう。

係員を乗せ約2kmを進みます。ちょうど伊予三島を発車したと思われる頃にドドっと専用線にも係員が出てきます。列車は分岐点手前では止まらず、そのまま専用線ヤードへ入ってきます。2kmの逆走が入換行為の1つなんでしょうね、予讃線から1本目の側線に入ります。

続いてスイッチャーが始動。到着したコキをコンテナ線へ入れる作業を行います。踏切脇にある側線から側線にわたるスイッチバック用側線がコキ3両分しか対応できないため、5~6両で送られてくる貨物列車を一気にコンテナ線に入れられません。そのため2分割で入れ込みを行います。

スイッチャは予讃線から2本目の側線を定位置にしています。スイッチバックを使って1本目側線へ移動し、到着したコキ編成のお尻に連結。まずコキ3両を引っ張ってスイッチバック線へ、続いてコンテナ線へ押し込んでいきます。

スイッチャーはすぐに離れてまた1本目側線へ移動。残ったコキを引っ張りさきほどと同じくコンテナ線へ押し込みます。先ほどのコキとコンテナ線でそのまま連結させ、単機で定位置に戻ります。スイッチャーの作業はなんとこれでおしまい!

続いてELが転線します。スイッチバック線へ移動後コンテナ線へ。さきほど持ってきたコキの前で止まって小休止となります。この一連の流れで約10分ほど。あっという間に入換作業が終わってしまいます。

ELはしばらく停止した後11:15頃伊予三島へ移動。0番線側線に入って15:00台出発まで休憩です。その後先ほどのコンテナ線停止位置まで戻り、積み込みが終わったコキをELが直接引き出し、伊予三島駅まで移動。伊予三島でELを付け替えて高松へ出発(3074レ)となります。

午後の入換も午前とまったく同じ。15:50頃伊予三島に到着する列車(3079レ)のタイミングでスイッチャーのエンジンが始動。午前と同様16:20頃にヤードに貨物列車が入ってきて、同じ手順で入換を行います。こちらもあっという間に入換が終わります。

出荷時は同様にELがけん引となりますので、スイッチャーは16:00台の運行で終わりとなります。興味深い専用線ですがスイッチャーは1日20分だけのお役目です。

ちなみに運行日は高松からのコンテナ発着があれば入換制約上、必ず運行されます。平日は確実に、たぶん土曜日は動きそう、日曜祝日はどうなんでしょうね、、、新聞・雑誌用などの紙を出荷していればなんとなく動いているような気もします。

ちなみに新居浜発着の貨物もありますが、新居浜駅の入換はELが行いスイッチャーはいません。


撮影ポイント

ヤードに並行して南側に歩行者用の小道があるので容易に撮影できます。ヤード東側にある跨線橋からヤードの全景と予讃線列車が、西側にある踏切からスイッチャーの入換風景を収めることができます。比較的安全に撮影ができるのですが、踏切周辺は操作のタイミングから撮影には注意が必要です。

なお、専用線ヤードは伊予三島から約2km東のところにありますが、まわりは小道が多く、車の駐車スペースが少々難です。ご注意ください。

PHOTO GALLERY

■時系列:午前入換前

・途中に忽然と分岐点がある専用線。スイッチャーが寝っころがり、パッと見、ただの貨物駅っぽい感じもあります。

     -2011.7.20

■時系列:午前便貨物通過~入線

・伊予三島到着の貨物が10:00頃に通過。このときすでにスイッチャーのエンジンは始動しています。D15-2はかつてのメイン機。

     -2011.7.20

・伊予三島でのELの付け替えが終わるころ、ドドっと職員が出てきてスタンバイ。

    -2011.7.20



・伊予三島から列車が来ました。スピードが遅く、踏切から望遠なら撮影が可能。ただし無理はダメすよ。

    -2011.7.20


・駅から約2kmの長~い構内を走ってきたということなのでしょうか。入換灯がついており、ELは一旦停止もなくそのまま専用線に入ってきます。

    -2011.7.20


・側線一番南側に入線します。

    -2011.7.20




■時系列:午前スイッチャー荷役線押し込み

・すぐにスイッチャーが始動。さきほど到着した側線へ転線します。

      -2011.7.20

・コキ3両を分割して1回目の荷役線への押し込み開始。踏切を超えて三島方へ出てきます。

     -2011.7.20



・スイッチバックにて荷役線へ。スイッチャーの煤煙がひどく、あたりは曇ってしまいます。

      -2011.7.20



・奥まで押して行ったあと、単機で戻ってきて、さきほどの残りのコキを取りに行きます。

       -2011.7.20



・さっきと同じく、引っ張り出して・・・。

      -2011.7.20



・スイッチバックして荷役線へ。

       -2011.7.20



・終わるとすぐに連結を外して、移動・・・。

      -2011.7.20



・定位置についたら、はい、おしまい。動くのはあっという間です。

    -2011.7.20



・続いてELが動きます。奥までいたのが知らないうちにスイッチャー方まで移動、スイッチャーの停止後すぐに転線します。

   -2011.7.20


・コンテナ荷受線のコキの前で停止。このままくっつけて引き出して・・と思えてしまいますが、なぜかこのあと伊予三島に戻っちゃうんです。なぜ、ここへ転線するんでしょうね、ポイント切り換えの操作を減らすため?

    -2011.7.20

・高松行きが通過する10:30頃にはすべてが終わってます。あっという間の入換でした。

   -2011.7.20




■時系列:午前便積車引き取り三島到着

・午前に到着した貨物の出荷は単機が専用線まで取りに行って伊予三島駅までいったん戻ってきます。そのまま1番線に入って2番線を使って機関車を付け替えます。

        -2015.1.26

■時系列:午前便貨物高松行き通過

・伊予三島へいったん引っ張っていった貨物列車は向きを変え高松へ向かいます。午後入れ換えの合図みたいなものですね。

      -2015.1.26

■時系列:午後便貨物通過

・そのあとしばらくして午後便の入れ換え列車が通過していきます。

       -2015.1.26

■時系列:午後便到着待ち

・特急や普通列車が1時間ヘッドで単線を行き交うため意外と入れ換え時間が制約されます。三島について折り返してくるまで特急がどんどん通過。

        -2015.1.26

■時系列:午後便到着

・入換灯をつけた列車がやってきました。スイッチャーはエンジンかけてスタンバイ。

        -2015.1.26


■時系列:午後便入換風景

・ELが引き込み終わるとスイッチャーが動きます。持ってきたコキのお尻にくっつくべく移動。。。

     -2015.1.26

・分割しての1回目の引き込みスタート。スイッチャーが引っ張って・・・。

        -2015.1.26



・引込み線でスイッチバックして屋根のある荷役線へ押し込んでいきます。

      -2015.1.26



・単機でまたもとのコキ編成へ戻っていきます。

       -2015.1.26



・残ったコキ編成をさっきと同じくスイッチバックして荷役線へ押し込んでいきます。

         -2015.1.26



・押し込みが終わると単機で戻ってきて最初のスイチャー停止場所へ帰ります。このあとELが午前と同じように動いて入換完了となります。午前入換同様ELが伊予三島までいったん帰るのかは不明です。

     -2015.1.26



■スイッチャーNo1:青

・北王子から来た北陸重機製25t車。北王子の専用線廃止に伴い再就職しました。ポンコツD15-2の代替機として末永く活躍しそう。

       -2015.1.26

■スイッチャーNo2:黄色5つ窓

・かつての予備機は青君導入後もそのまま予備機。色は塗り替えられてきれいになりましたが動いてるところって見たことある人いるのかな。それにしてもガラス曇りすぎ。運転できるんかいな。

      -2015.1.26

■スイッチャーNo2:黄色5つ窓-旧赤色時代

・こちらは以前も予備機。黄色のふたの下には「大王製紙」のロゴが書かれていました。塗り替えもしないので廃車するのかと思ったら黄色に塗り替えられてNo2になっちゃいました。

     -2011.7.20

■スイッチャーNo3:黄

・こちらはD15-2が本機だった頃。今はNo3となっていつでもリタイヤできる状態になってますね。ペンキも塗ってくれません。

      -2011.7.20     -2015.1.26

■スイッチャーNo1-3:

・三銃士とでもいうんでしょうかね~。ちゃんと動くのは青だけ。しかもちょっとだけしか動きません。まあ毎日お仕事あるからいいかもですね。

       -2015.1.26

■スイッチャー:かつての赤&黄

・大体のこの定位置で休んでいます。

     -2011.7.20



■専用線ヤード

・入換時間があっという間なのでこうした静まり返った姿が日常的なのでしょうね。

     -2011.7.20

・デカデカと「専用線」という看板が掲げられているところって他にもあるのでしょうか。

      -2011.7.20



・脇をしおかぜが通過。

    -2011.7.20



・通過列車が通る以外は何もない静かな構内です。

        -2011.7.20




■伊予三島

・ELは待ち時間が長いので伊予三島までいったん戻ってきます。入換は3番線にコキを置いて1番線を使って転線しますが、ELの待機は0番線が使われます。

     -2011.7.20

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