解説

岩手開発鉄道は大船渡市を走る貨物専用鉄道で、セメント原石を鉱山から工場までを結びます。ブルーの凸型ディーゼル機関車がセキを引き連れて全長11.5kmを走ります。もともとは釜石線平倉駅までをつなぐ計画で敷設が始まりましたが戦時中に工事がストップし、岩手石橋までとなりました。

かつては旅客輸送も行ってましたが、閑散地域を走る産業用鉄道とあってほとんど乗車がなく、沿線サービスという色合いが強いものでした。1992年3月31日、旅客営業を終了、以降、貨物専業鉄道となりました。旅客を扱っていた時代は盛駅から終点岩手石橋までの筋と途中駅の日頃市までの区間運転とがあり、12mと小柄な車体の「キハ202」が使われていました。

このキハ202は切妻タイプの2枚窓のかわいらしい気動車で、自社発注の特殊な車両だったため結構人気がありました。予備者として夕張鉄道からきたキハ301も古風な顔つきで特徴ある車両たちでした。どちらも旅客廃止後しばらく盛の留置線に置かれてましたが2001年に解体されてしまいました。

路線は盛駅を基点に北側へ伸びる路線が日頃市線、南へ伸びる線が赤崎線となって分かれています。これは建設当初は盛から北を目指して敷設されたため、後に延長となった盛~赤崎が別線となったからです。

実際の運行はこの路線別ではなく、赤崎から盛を経て石橋までを1つの線区とみて直通で運転されています。石橋の奥にある大船渡鉱山から切り出される石灰石を岩手石橋駅で積み込み、赤崎にある太平洋セメント大船渡工場まで運搬。空車をまた石橋へ戻すという単純往復の運転となっています。

機関庫は途中の盛駅にあり、貨車などの留置も盛駅構内を使用しています。両端の石橋、赤碕とも積み下ろし設備だけで機関車や貨車の留置はしていません。

ダイヤは1日13往復の設定があり、基本は2編成が入って往復するスタイルとなります。かつては朝6時くらいから夜12時まで頻繁に運転されてましたが、ここ最近は8時~17時まで、平日のみで40~50分ヘッドで運転されています。途中駅での交換は長安寺か日頃市で行われます。盛でも交換可能ですが、今のダイヤでは行われていません。

砕石の積み込み、積み下ろしはかなりタイトな時間内で行われます。基本はどちらも15~30分ほどでの入換と積み込み、積み下ろしなので、あまり余裕がありません。

途中の沿線風景ですが、赤崎から大船渡市内はこのあたりらしい、海に山が迫るすこしの平地に町が広がる風景で、市街を抜けると起伏の大きい山間の谷を進む感じとなります。終点の石橋駅はスイッチバックとなっており、勾配を上りきってバックで積み込みヤードへ貨車を押し込んで、機関車付け替え、再び赤碕へと向かいます。

2011年3月11日の大震災では赤崎線が大きな被害を受け、また荷主のセメント工場も被災。復旧活動とセメント工場の再開を目指して急ピッチで整備が進み、11月4日にセメント工場が再開。7日から鉄道も運行を開始いたしました。スタート時は7往復の間引き運転となってますが、現在は元の13往復運転に戻っています。


撮影ポイント

お好きなところで撮影できます。鉄橋あり、俯瞰あり、紅葉と新緑の時期がベストシーズン。ググって見たら撮影ポイントがすぐに見つかるでしょう。セキ車を凸型DLが牽引するなんて、すっかり見なくなった今、貴重な鉄道といってもいいでしょう。1日入ればお気に入りの場所で好きなだけ写真が撮れることでしょう。

なお、運転日は土曜日運転もまだあるようですが不定期っぽいようです。基本は平日運行で、祝日も確か動いていたと思います。日曜日は運休になるのと、セメント工場が定期修繕でシャットダウンするとき、鉱山の点検日などは不規則に運休します。

場所がとても不便なところなので、運転が確実のありそうなGW谷間や秋の飛び石連休を使っての平日ゲットがベストでしょう。

PHOTO GALLERY

■赤崎

・赤崎は駅舎もある立派な施設。とはいえ、構内は砕石の積み出しということでそう大きくはありません。

      -2002.6.8

・入換は貨車を二分割、吐き出しが終わるとすぐに編成を組みなおし石橋へ出発します。

      -2002.6.8




■赤崎~盛

・盛川にかかる鉄橋。すぐ海側は三陸鉄道の鉄橋が並びます。

   -1997.11.6  -2002.6.8   -2002.8.31


■盛

・旅客駅時代の懐かし風景。ホームや待合室はすでに撤去されています。駅名標の猪川駅は旅客廃止とともに廃駅となってます。

    -1986.3.7

・旅客廃止後も長らくDCが放置されていました。

    -1997.11.6





■盛~長安寺

・盛川べりを行く。このあたりはご覧のとおり、紅葉が美しいところです。

     -1997.11.6



■長安寺

・旅客時代の駅舎が残ります。

   -1997.11.6  -2002.6.8



■長安寺~日頃市

・築堤を行く有名な撮影ポイント。手軽に編成写真が撮れます。

      -1997.11.6

・夏はご覧のとおり。雰囲気が変わります。



    -2002.6.8

・もう少し奥まったところで。

    -1997.11.6





■日頃市~岩手石橋

・石橋近くの手軽に撮れる築堤。

   -1997.11.6    -2002.6.8

・石橋駅下から見上げたところ。この先がスイッチバックとなり石橋駅となります。

     -1997.11.6





■岩手石橋

・砕石の積み込みは車両を分割せず、機関車が少しずつ貨車をずらして積み込んでいきます。スイッチバックとなっていますが機回しはせず、バックで進んだ後、赤碕方面へ向かいます。

        -2002.6.8

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