解説

セーチェーニ山子供鉄道(ジュルメクワシュート)は、ブダペストのブダ側にあるヤーノシュ山を走るナローの軽便鉄道で、子供だけで運営されている有名な子供鉄道です。子供鉄道といっても全長11Kmで交換ポイントもある本格的な鉄道で、へろへろの狭軌レールと小さい車輌がDL+2両という、まさに絵に描いたような軽便鉄道です。ブダペストのようなこんな都会の裏山に、軽便鉄道があるなんて贅沢なところです。

さて、この鉄道、機関士以外がすべて子供によって運営されており、キップの窓口、駅信号、ポイント切り替え、車掌から社内検札まで、10~14歳の子供が職員となって仕事をしています。1951年に開設された、旧共産圏に多くあった職業訓練的要素の学校教育(ピオネール活動)の一環で、今もその役割を果たしています。

外国からの観光客も多く、お客さんの言語も多数の言葉が飛び交います。街中では英語が通じにくいのですが、子供が番をするここの窓口では英語が通じたりします。もちろんキップ購入に関しては筆談が一番いいコミュニケーションです。

さて、路線ですが、基点となるふもとのフューヴォシュヴォルジュ(Hűvösvölgy)駅はモスクワ広場からトラム56に乗って終点にある駅で、山間にある駅です。機関庫はここに置かれ、駅舎向かって右手奥に結構しっかりとした車庫を持っています。駅はコンクリート作りで地下道のある1面2線のしっかりした駅で、ホーム真ん中にお手洗いや待合室、キップの窓口、職員(子供)の詰め所などがあります。列車が到着すると機関車の付け替えが始まります。ポイントには旗を持った子供が立って機関車を案内、機回しが終われば発車準備の完了です。連結の作業はさすがに機関士が行います。

フューヴォシュヴォルジュ(Hűvösvölgy)を出た列車は、ヤーノシュ山の山林の中を進みます。森林鉄道の様相で背の高い針葉樹林の中を列車は進んでいきます。途中住宅街や開けたところがありますがほとんど森の中を行く感じです。勾配を登るため線路はクネクネと蛇行しながら敷設されており、右に左とカーブをします。小さなトンネルを抜けつつガタゴトと小さな列車は進んでいきます。次のHárs-hegy駅は森林の中にあるホームだけの駅で周囲に街もない森の中の駅です。うっそうとした森の中を列車は進んでいきます。

少し景色が広がるとSzépjuhászné駅に到着。この駅は有人駅で列車交換が可能な駅です。列車が到着すると乗降客や信号係や駅の職員が出てきてにぎやかになります。ここではバス22番と接続しますがここでの乗り換えは外国人にはちょっとお勧めできません。

Szépjuhászné駅を出ると車窓からはちらちら遠くの山々を望むことができますが、山の中を再び進んでいきます。下記週末のみt停車するVadaspark駅を経て、次の交換駅ヤーノシュ山(János-hegy)駅は、ブダペストが一望できるヤーノシュ山エルジェーベト展望台への登山道がつながります。この駅ではハイカーが結構乗降します。展望台までは駅から20~30分程度で到着します。駅は無人駅です。

森の中のヤーノシュ山駅を出るとしばらくまた森の中を列車は進みます。Virágvölgy駅を経て、Csillebérc駅あたりになると徐々に森が開けてきます。Normafa駅を出ると住宅街や牧草地など横目に山上の高原風景をしばらく走る感じになります。腕木式信号が見えてきたら終点セーチェーニ山(Széchenyi-hegy)駅に到着。

この駅も終点ということで信号係から車輌案内、キップ窓口など、子供がたくさん詰めています。始発駅とはちがってホームは簡易ホームでちゃちなつくりとなっています。ただ駅舎はそれなりのしっかりしたものになっています。到着した列車はお客さんを降ろしていったん改札を閉め、機関車の付け替えをしたあと新たなお客さんを乗せます。 お客さんを乗せ、発車時刻になったらまたフューヴォシュヴォルジュ(Hűvösvölgy)へ向けて出発します。

セーチェーニ山(Széchenyi-hegy)駅からは登山電車のセーチェーニ山(Széchenyi-hegy)駅に接続します。駅前の大きな広場をまっすぐ歩くと小さな駅舎が見えてきます。ここから登山電車で下山するとトラム56と接続し、もと来たモスクワ広場へ戻れます。

Tips

セーチェーニ山子供鉄道沿いの観光スポットはヤーノシュ山からの展望。ブダペスト市街が一望できます。ただ、ヤーノシュ山駅から展望台までは少し歩かねばならず、また風景もそうすごいということもないので、この子供列車を乗るという観光だけでも十分かと思います。

乗車はモスクワ広場から起点駅のトラム61番で終点のフューヴォシュヴォルジュ(Hűvösvölgy)へ行き切ってしまって子供鉄道に乗る方法と、その途中にある登山電車でセーチェーニ山へ上がってから乗る方法と両方あります。

また子供鉄道の完全乗車は気にならない方でヤーノシュ山の展望を中心に考えたいコースとして、モスクワ広場からトラム59に乗り終点Márton Áron térまで行き、そこからヤーノシュ山へつながるリフトで山に乗る方法があります。

どちらでも行けますのでお好きなほうをお選びください。

PHOTO GALLERY

■Széchenyi-hegy(セーチェーニ山)

・石造りのこじんまりとした駅舎。一見地方の田舎駅の感じです。「Gyermekvasút」とは子供鉄道という意。

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・保存のDCカー。

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・フューヴォシュヴォルジュからの列車が到着しました。子供駅員が列車の向か入れを行います。

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・機関車の入れ換えが始まりました。もちろん操作は大人が行います。

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・改札係の子供たちが入れ替えの間ホーム辺りでウロウロしています。

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・今日の窓口担当はしっかりした女の子。アメリカ人のお客さんにも片言の英語で対応です。

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・乗車完了、発車時刻までしばらく待ちます。車両は客車タイプと半オープンタイプとありますが、旅行者はみんな半オープンのほうに乗り込んでいきます。

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■Széchenyi-hegy(セーチェーニ山)~Normafa

・のどかな軽便鉄道の感じがいいですね。セーチェニ山駅付近から望遠で狙いました。

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■Normafa~Csillebérc

・子供が車内改札に来ました。上手に切符を切っていきます。

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■János-hegy(ヤーノシュ山)

・乗降の確認が出来たら列車は発車です。森の中へ吸い込まれていきます。

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・列車が出発すると静寂につつまれます。エルジェーベト展望台から降りてきた人たちが次の列車を待っています。

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・Szépjuhászné駅からセーチェーニ山行きの列車が到着しました。どこからともなく日本人が現れ列車をパシャパシャ。

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・フューヴォシュヴォルジュ(Hűvösvölgy)から来た列車からもたくさんの人が下車しました。

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・客車にはストーブが設置されています。この鉄道冬場も走ります。

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・セーチェニ山から折り返してきた列車がやってきました。

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■János-hegy~Szépjuhászné

・カーブが続く山の中を進んでいきます。

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■Szépjuhászné

・反対方向との列車交換はこの駅で行います。駅舎もある中間駅での駅らしい駅です。ここでは女の子2人がお出迎えです。

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■Hárs-hegy~Hűvösvölgy

・たまに見える風景は丘陵を行く列車の走る場所を確認できます。唯一のトンネルがあるのはこの区間で勾配のきついところでもあります。

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■Hűvösvölgy (フューヴォシュヴォルジュ)

・フューヴォシュヴォルジュ駅は地方ローカル線並みにしっかりした駅。この線路の向こう側に割りと大き目の車庫があります。

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・到着したらすぐに機回し。今日は新人君にお兄さんがついて指導をしていました。

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・連結作業は大人の仕事。その間子供たちはブラブラしてお話に夢中。やっぱり子供ですね。

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・発車時刻になりましたが列車が動きません。なにかトラブルのようです。ポイント係は一人待ちぼうけ。

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・エンジントラブルのようです。エンジニアが来るまで少々運転休止です。子供たちは仕事がなくなって楽しそう。

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・大き目のホームにちょこんと列車が座る感じが軽便鉄道らしい感じです。

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・この駅の窓口も女の子。記念に切符を買おうと寄りましたがなにやら計算でいそがしそうでした。

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・ホームはずれにある静態保存のSL。この鉄道には動態保存のSLもあり、特定日にはSLを運転してくれます。

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・トラム乗り場から見たフューヴォシュヴォルジュ駅。しっかりした感じがします。

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