解説

香港島を走る有名な二階建て路面電車は「電車」と呼ばれ、香港電車公司という企業が経営する私鉄です。歴史は古く、1904年に開業、以降香港島北部の中心地を東西に結ぶ路線が形成されていきました。香港島中心部に地下鉄が開通するまでは香港島の重要な公共交通機関としてその役目を果たしてきました。今でも1日24万人が利用する重要な交通機関です。

路線は現在6系統が組まれており、中心地である上環~北角をメインに繁華街はほぼカバーされています。各方面へ向かう列車ごとに色別の行き先表が掲示され、初めての利用者でもわかりやすいです。系統は、筲箕灣~上環街市、筲箕灣~跑馬地、北角~屈地街、跑馬地~堅尼地城、銅鑼灣~堅尼地城、上環街市~堅尼地城 に大別されます。ラッシュ時間帯には区間運転や変則運転があって、時刻表もない中、どうやって運行管理しているのか不思議に思います。(何か運転手はバスにあるような札を持っている) 

全長で約30km、停留所は上下線併せて123ヶ所で平均250mに1つあります。通常運転車両は161両となっています(2005年12月現在)。車庫は西灣河と石塘阻の路線東西の両端にあり、上環にある石塘阻の車庫は香港映画で戦うシーンによく出てきたところで、特にGメン75香港シリーズのムキムキマン対決ではおなじみのところです。運転は朝6時から深夜12時まで、ラッシュ時間帯に併せて運転本数の増減があります。所要時間は堅尼地城~筲箕灣だと80~90分と地下鉄の4倍ほどの時間がかかります(直通運転はなし)。

大半の電車は今でも古いままで釣り掛けのうめき音が響きます。車内は質素で、古いタイプは1階のいすがベニヤにペンキを塗ったような感じのものもあります。基本的には1階のつくりは立席中心の設計、2階は天井は低いですが椅子席で進行方向設置となっています。高所で眺めはよく、観光には最適です。ただ冷房がないので夏場はかなり暑苦しい空間となります。2000年から新車の導入が始まりましたがまだまだおんぼろ車両が大半を占めます。

電車の運転は新界の輕鐵同様、車両の運転方向が一応決まっています。車両はみな両運転台仕様ですが2階上正面に車体番号が書いた箱(変圧器?)が正面となっています。2階座席はそのルールで進行方向に固定されています(たまに理由はわかりませんが、逆向きで来るやつがありそれだと2階は最悪)。車体の前後ろがあるので折り返しとなる停留所には必ずループ線があります。跑馬地経由の系統はこの跑馬地支線が大きなループ線と考えていいでしょう(なので一方通行)。

沿線風景は高層ビル群の中を進む独特の風景です。特に跑馬地を経る路線は単線(一方通行)で、細い路地を行く姿が香港らしいです。また北角折り返し電車が通る市場の中を突っ切るループ線は人ごみの中をトラムが突っ込んでいくシーンで有名。警笛にも動じず平気で電車の前を人が横切ります。運転手もしっかりしていて多少のことでは動じません。

そんな感じで、バスよりちゃっちいポンコツ電車が世界有数の金融街や高層ビル群を潜り抜け行ったり来たりしている、不思議な感じがあります。電車賃も激安で、どこまでいっても1回乗車2.3HKドル(約40円)という破格値です。もちろん、スピードが遅いので始発から終点までの長距離を乗るような人は物好きな観光客だけですが、香港市民にとっては便利のいい乗り物として愛用されています。

なお乗車は後乗り前降り、2階も後ろの階段から上がって前の階段から降りるルールです。また下車の際はおつりが出ませんので小銭を準備しておく必要があります。またオクトパスカードが使えますのでそちらのほうが便利でしょう。

  電車路線圖 ©香港電車公司


撮影ポイント

どこか好きなところで・・・という感じでしょうか。ただビルの合間を東西に路線が伸びていますので順光で撮るのはなかなかむずかしいです。ただカラッと晴れ上がるときはそうないので問題になることはあまりないと思います。


旅メモ

香港島の町々を訪問しながら完乗を目指してみてはいかがでしょうか。時間が限られる場合は地下鉄と併用して回って見ましょう。北角行き(終点前のループ線)や跑馬地経由の2系統は乗ってみると面白いです。ここ以外でも、本数も多く乗車も1回たったの2.3HK$(2011年に2ドルから値上げ)なので、街をぶらぶらしながら電車が来たら乗って移動なんてことも可能です。

PHOTO GALLERY

■上環 港澳碼頭~上環(西港城)總站

・ここは干諾道西⇔徳輔道中をつなぐ細い路地を走るのですが、ガンガントラムが来るのでちょっと怖い感じさえします。

     -2010.10.30


■上環 上環(西港城)總站

・一部系統が始発になります。地下鉄上環駅からは少し離れてます。

         -2010.10.30


■上環 禧利街

・狭い道路の両脇に高層ビルが並ぶのでずっと影の中って感じです。地下鉄上環駅乗り換えはこの停留所。

         -2010.10.30


■上環 機利文街

・このあたりが上環の中心地。銀行やお店が並びます。人通りも結構多いです。

      -2010.10.30


■中環 租庇利街

・ビジネス街の中環になると雰囲気も少し変わります。

       -2010.10.30

・なんかごちゃごちゃ。どこもこんな感じだったりします。

     -2010.10.30




■中環 畢打街

・中環に路線が集まるのでご覧のとおりバスやらトラムやらもう入り乱れてもうめちゃくちゃ。ちゃんと車両が動いているのが不思議です。

         -2010.10.30

・さらに朝は荷下ろしするトラックがずらりと並ぶので余計にぐっちゃぐちゃ。

       -2010.10.30




■中環 遮打花園

・カーブを大きく回ってくるいい感じ。次々に列車が来るので10分もいれば飽きてきます。

          -2002.2.23


■灣仔 莊士敦道

・このあたりは細い旧道を走る感じ。道路にホームがないところが多いです。

     -2002.2.22  -2002.2.25


■灣仔 軒尼詩道

・ビジネス街のど真ん中という感じ。

    -2002.2.22

・朝のラッシュ時間帯だったが意外とすいていました。日の当たるところを探しとりあえず撮影。新型車もゲットできました。

          -2002.2.25




■北角 英皇道

・ディープな雰囲気のこの界隈。しかし意外とこのあたりはオフィス街だったりします。歩道橋からいろんな角度で撮れるお手軽撮影地。

          -2002.2.23


■北角 春秧街

・市場の中を電車が突っ込んでいくシーンは圧巻。路上駐車もぎりぎり、荷物も線路ぎりぎり。人は縦横無尽・・・。荷物はみ出しでたまに鳴らされるが店からおっさんが出てきて邪魔モノを引っ張って終わり、知らん顔。・・・すごい。

       -2002.2.23


■銅鑼灣 高士威道

・このあたりは香港島ではめずらしく開けたところ。雰囲気の違う一枚が撮りたくて訪問。

     -2002.2.25


■銅鑼灣 怡和街

・銅鑼灣の中心地あたり。せせこましい感じですがコンパクトに街が固まっているようなところです。デパートや大きな本屋もありちょっとしたお買い物スポット。銅鑼灣折り返し列車はループ線に入って折り返します。

           -2002.2.25


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