解説

香港鐵路-東鐵線は中国本土と香港を結ぶ鉄道でかつて九廣鐵路(KCR)と呼ばれていた路線です。2003年12月に部分開業した「西鐵」と区別するため、香港内での名称を「九廣東鐵」と改称し、その後2007年12月に九廣鐵路と地下鐵路が合併、新社名を香港鐵路と改称し、九廣東鐵は東鐵線となりました。

起点は九龍の繁華街尖沙咀の尖東駅で、これまでの起点駅だった紅磡から尖沙咀エリアまで2004年10月に路線延長された新駅です。(旧地下鉄)尖沙咀駅との接続もよく、便利になりました。尖東駅からは最終的に西鐵線との相互乗り入れされる予定です。

また2007年8月には新たな中国とのゲートを結ぶ支線として「落馬洲支線」が開業。上水から分岐し落馬洲までを結び、終点落馬洲で深圳地下鉄4号線の皇崗駅と接続します。

香港域内の列車は中国国境ゲートのある羅湖行きと上水行きがだいたい交互で運転されるダイヤが組まれています。朝夕ラッシュ時には途中馬場駅付近にある車輌基地からの列車やりくりに伴う区間運転が行われます。本数は多く、ラッシュ時は2~3分に1本、日中でも5~7分に1本の割合で運転され、さながら東京の山手線と同じ感じです。朝夕の通勤も相当なもので日本と変わりありません。また、日中も中国からの越境者で常に混雑している状況で、大きな荷物を持った人がラッシュ時間にも乗り込んできて結構迷惑なときもあります。

尖東駅を出た列車は地上にあがり、元起点駅の紅磡駅へ。現在も中国本土への国際列車が発着する国際ステーションです。駅舎は割と大きなつくりですが駅構内は狭く、きちきちの敷地内に国際列車ホームと国内列車ホーム、貨物ヤードが組み合わさったようなつくりになっています。特に貨物は窮屈で機関車の付け替えがやっとという感じです。主な荷物は埠頭からのコンテナや本土から香港に持ち込まれる物流関連の品々です。

市街の中を抜け築堤を走り旺角駅に到着。(旧地下鉄)顴塘線、筌灣線に同じ名前の旺角駅がありますが、少し距離が離れています。乗り換えは次の九龍塘駅が便利。乗り換え連絡口として乗降が非常に多い駅です。トンネルを抜け大圍付近からは団地の中を走る感じで、高層ビルを車窓に眺めながら香港らしい風景が続きます。大圍からは2005年12月に開通した「馬鐵」こと、馬鞍山線が分岐します。次の火炭駅からは大學駅まで路線が2つに分かれますが、実際は平行にレールが走っており、一方が本線、一方が操車場との連絡線の役割を果たしています。沙田競馬の開催日には頻繁に馬場経由の列車が運転されます。

大學駅あたりになると高層ビル群が途絶え、少し鄙びた地方の感じになってきます。海を横目にのどかな風景をしばらく走ると再び高層ビル群の中に入っていきます。太和駅をすぎると丘陵地を走る風景に変わり、駅間が長くなります。再び高層ビル群が見えてきたら上水地区のニュータウン入り口の粉嶺駅。上水駅は新界地区への連絡駅で、元朗方面へのバスが多く発着します。えびなどの養殖池を横目に遠く深圳の高層ビル群が見えてきたら、中国国境と接する終点羅湖に到着です。

ここから深圳へは深圳川を挟んで歩いて越境する形になります。羅湖は駅を降りる際には必ずパスポートが必要です。現在日本国籍であればビザなしで中国本土に入国できますので、深圳へ立ち寄る場合はパスポートを携帯ください。中国サイドの深圳側では中国国鉄の深圳駅と地下鉄羅湖駅と接続しています。なお香港側の羅湖駅は駅外へ出れません。車内の様子

また落馬洲駅も羅湖と同様の仕組みになっています。上水で列車に乗り換えとなります。なお、落馬洲支線は終点の落馬洲までの間に2駅新設される予定があり、将来の地域開発と併せ開業する予定です。

東鐵線で使われる車両はどれも新しくて清潔感あるつくりとなっています。座席がステンレス製なので座り心地は最悪ですが、暑い夏場には冷たくて気持ちいいです。車両は2タイプあって、流線型のほうが西鐵線開業に伴って導入された最新型となっています。全車に日本のグリーン車のような「頭等」車が1両連結されています。

また、国際列車(城際客運)は広州(たいていは広州東行き)との間に列車タイプに合わせて「新時速」「九廣通」「準高速」の3種類の列車設定がされており、1日10往復ほどの頻度で運転されています。「新時速」はスウェーデンX2000と同系の高速列車で中国国鉄所属、広州とは90分で結び最速です。「九廣通」は、香港鐵路所属で100分で結び、ダブルデッカー車を電気機関車で牽引、「準高速」は中国国鉄所属機関車が客車を引くという形で広州とは105分で結びます。「新時速」「九廣通」とも国際列車としての風格があり、内装もよく、乗るならこちらでしょう。

このほかにも中国乗り入れの長距離列車で上海と北京におよそ隔日で1本運行されています。どの列車も越境時には国境で止まらずそのまま通過します。香港の入管は紅磡駅で行う形式となっています。  

 鐵路路線図
  ©香港鐵路

 旧九廣鐵路路線図
  ©香港鐵路


撮影ポイント

紅磡駅北側にかかる跨線橋上から撮影可能。大學駅ホーム端からも手軽に撮影できます。東鐵ではホーム端に信号機材などの障害物が多いのですがこの駅は比較的少なくて撮り易いです。またこの大學駅を降りて左手に香港中文大學を横目に上水側へ線路伝いに歩くとすぐ跨線橋があり、そこから上下線に対して撮影ができます。逆の九龍側にも少し歩きますが歩道橋から俯瞰気味の撮影できるポイントもあります。

太和~粉嶺では丘陵地を走る感じのいいところが多いです。いくつかある跨線橋上からいろんなカットが狙え、この路線の基本的な撮影ポイントとなっています。ただこの区間は交通の便が悪く、駅から跨線橋があるあたりまで歩くにはちょっと距離があります。並行する道路にはバスも何本か走っていますのでそれを利用することをお勧めします。なおまわりには何もないので夏場の撮影にはご注意を(水を必ず携帯!)。

また、落馬洲支線はほとんど地下と高架上を走るため撮影には不向きです。

あと、各駅での駅撮りも可能ですが、香港では鉄道撮影は禁止はされてませんが駅での撮影に関しては職員に注意されることが多く、トラブル防止のためにもささっと撮って、注意されたら素直にカメラをしまうなど配慮に心がけましょう。地下鉄ほど注意されることはありません。(撮影中は一度も注意されませんでした)

<厳重注意>香港では2024年春に国家安全条例(いわゆる反スパイ法)制定され、鉄道の撮影も対象に入る恐れが出てきました。香港島の二階建て電車やピークトラムなど観光色が強いものやスマホでの撮影レベルは大丈夫そうも、港鐵や城際列車などの香港のコアとなる鉄道インフラものは撮影を控えたほうがよさそうです(特に一眼レフなど本格カメラ/レンズ利用については注意のほど)。


旅のお勧めガイド

鉄道・バスを使った半島一周旅行がお勧めです。半日あれば十分でしょう。中心地の尖沙咀あたりからだと、西鐵経由で時計回りのほうがお勧めです。途中元朗から上水方面へのバスのりばがわかりやすいからです。

筌灣線で美孚へ。ここで西鐵に乗り換え屯門まで行きます。なお屯門までは中心地からバスでいくことも可能です(高速道路からの一味違った風景が楽しめるのでお勧め)。屯門からは軽便電車で元朗へ(乗る系統の確認を)。終点の元朗はバスターミナルになっているので、そこから上水方面行きに乗車。上水から東鐵線で中心地に戻るというプランです。

もちろん乗り物に乗りっぱなしではなく、途中気に入ったところで散策したりすると違った香港風景も楽しめます。なおバス路線については売店や書店で売っている「香港街道街方指南」のような地図帳を購入すれば系統番号を確認でき、安心してうろつくことが可能です。ただし時刻については現地バス停に設置の時刻表をチェックしましょう。(たいていの幹線は1時間に2~3本はある)

PHOTO GALLERY

紅磡

・ターミナル自体はかなり巨大も鉄道発着線は少ない。城際列車は隔離されたホームから発着します。

          -2010.10.30


紅磡~旺角

・駅からすぐの跨線橋から撮影。架線の処理が難しい。

    -2002.2.24


大圍

・香港の住宅は基本高層住宅なんでエリアあたりの人口が多いんでしょうね、だからどの駅でも混雑してるんでしょう。

     -2010.10.30


九龍塘

・駅撮りとしては手軽な撮影ができるところ。とはいえ、日中でもラッシュ時のような混在なのでちょっぴりはずかしいかな・・・

         -2010.10.30


火炭~大學

・ここは東鉄線でめずらしく気軽に鉄道写真が撮れるところ。鉄道切土の上にかかる歩道橋あたりからいろんな角度で撮影できます。

           10  -2010.10.30

大學

・文字通りそばに大学(香港中文大学)があるんですが、住宅街がなくても乗降客が多いんです。ハイキングコースもあるので学生だけでなくハイカーたちもちらほら見ます。

       -2010.10.30

・ホーム端からきれいに写真が撮れますが全編成はちょっと難しいかな・・・当時は何も言われませんでしたが今はどうなんだろう・・・ご注意の程。

         -2002.2.23
    10 11 12 -2010.10.30


・沙田寄りの高台から大学駅を俯瞰できます。

       -2010.10.30


大學~大埔墟

・海をバックに狙える珍しいところ。同じ列車ばかり来るのですぐに飽きてしまいます。

    -2001.3.19


大埔墟

・とにかくいつでもどこでも人が多い~東京と変わらんですね~

      -2010.10.30


太和

・駅自体は建物の中に納まって上越新幹線っぽい造りかな。。。ホーム端から何とか車両は撮れるけど・・・って感じ。

        -2010.10.30


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