解説

バンブリーの南東、Vasse Hwy(10号線)沿いにある森の町ペンバートン(Pemberton)に拠点を持つ「ペンバートン・トラムウェイ(Pemberton Tramway)」は、SLと小さなディーゼルトラムを走らせる独特の保存鉄道です。

ペンバートン周辺は緑が深く、開拓で切られずに残った木々が数多く残っています。Karri、Marri、Jarrahの木が有名で、特にKarriの群生地は赤い木肌が森をほんのりと明るくします。

基点となるペンバートン駅は、ペンバートン市街の少し外れのような場所に位置し、駅舎が1つに車両分の小さな機関庫があるだけの、まさに廃駅のような雰囲気の駅です。市街のはずれといってもペンバートンの町は小さな街で、数ブロックで終わってしまう典型的なオーストラリアの田舎町です。

もともとこの路線は木材切り出し用に作られた路線でその後需要がなくなり廃線となったのですが、緑が深いこの地域の観光促進に一部路線を復活させようということになり、まず1987年に現在トラムが運行されているペンバートン~ノースクリフ(Northcliffe)の全長36kmが開業。続いて1995年にSL運転が行われるペンバートン~ランバート(Lambert)、全長21kmが開業して現在の形となりました。

それぞれ線路は繋がっていますが運行形態はペンバートンで分けられており、トラムのほうは「Northcliffe line」、SLのほうは「Lyall Line」とも呼ばれ区別されています。

ノースクリフ線(Northcliffe line)-トラム

南側で使われるトラムは液体式ディーゼルエンジン搭載の小さな車両で、旅客数に応じて1~3両編成で運転されます。運転は毎日設定されていますが、予約が入らないと運転しないこともあります。沿線に花が咲く現地の春(9~10月)、現地の夏(クリスマス~1月)がピークシーズンとなります。列車の運転は午前と午後に設定されています。

さてこのトラムはホームがある駅舎の前からではなく敷地の道路わきのようなところから発車します。切符はペンバートンの駅であらかじめ購入します。トラム線の駅は8つありますが途中駅での乗降扱いはせず、ペンバートンを発車してペンバートンに戻ってくる往復運転が基本となっています。

通常の運転はウォーレン・リバー・ブリッジ(Warren River Bridge)までとなっています。かつてはノースクリフまで特別運行で年に数回運転されていましたが、2007年から運行停止とねり、ウォーレン・リバー・ブリッジ~ノースクリフ間は廃止状態になっています。かつては36kmの道のりを往復するのに1日がかりで運転されていたのですが・・残念です。

運行スケジュールは、途中、カスケード・サイディング(Cascade Siding)と折り返し点となっているウォーレン・リバー・ブリッジでそれぞれ停車し、ガイドがつく散策時間が設けられています。往復の所要時間を1時間45分取っているのはこうした散策時間が含まれているからです。

このトラム線の車窓風景は、深い森の中を行く美しいもので、線路と並走するウォーレン川を見ながらの緑の回廊を進む気持ちのいい車窓です。トラムと徒歩で散策するというイメージが適切で、気軽なハイキングを楽しむといった感じです。

味のある手書きの時刻表

ライエル線(Lyall Line)-SL

一方、SL運転のほうは、かつて本線で使われていた本格的なSLとレトロ客車の編成で運行されます。ただ、こちらのSL運転も2007年から運行停止状態となっており、現在も全線で運行休止となっています。運転再開の目処は立っておらず、このまま廃止される可能性もあります。

一応・・・運転時には、ペンバートン発SLが正面方向を向いての運転となり、折り返し点では着回しをせずそのままバックで先頭に立ち、後ろ向きでの運転でペンバートンへ戻ってきます。

こちらの線には8つの駅が設定されていますがどの駅にも止まらず(イーストブルックで乗降扱いする場合がある)、終点のランバートまで止まらずに行ってしまいます。ランバートには売店や住居すらもなく、駅舎もない単なる入れ替え用の側線を持つだけの「場所」となっています。ホームもないため下車ははしごを使って降りることになります。

このSLもトラム同様ペンバートンから往復でのセット乗車となっており、ランバート駅での客扱いはしていません。土日運転で午前と午後便が設定され、SL運転日はトラムとSLを両方乗れるようなダイヤ編成となっています。ハイシーズンには平日も曜日限定で運転されます。

こちらの車窓はトラム側より視界が開けており、途中農場などを横目に見ながらの、典型的なこのあたりの田舎風景を見ての乗車となります。古きよき旅を思い出すというような雰囲気でしょうか。親子連れ、おじいさんおばあさんなども乗車しています。

なお、実際の乗車に当たってはホームページなどで確認をしましょう。


ペンバートンとペンバートンまでの足

ペンバートンはほんとうに小さな街で食事は中心部交差点付近に数件あるだけです。バンブリーなどであらかじめ食料を用意していくか、途中のブリッジタウンで調達(といっても小さな街)、またはペンバートン市内のテイクアウトのお店で調達するのみとなります。

ペンバートンまでの足ですが、訪問はレンタカーに限ります(一応バスはあるが時間が限られ移動制限が大きい)。 また、パースからだと少し距離があり日帰りはちょっとしんどい感じです。バンブリーやバンブリーの西のBusseltonはリゾート地なのでここでの1日宿を取るのがお勧めです。

それから、このあたりにはまともなガススタンドもないので途中大きな街でガソリンを満タンにすることを心がけましょう。


観光スポット

岬に立つ美しい灯台 このあたりには国立公園などが多く点在します。森が美しく、10号線はシニックハイウェイといっても過言ではないでしょう。窓を開けてのドライブがとても気持ちいいところです。イーグル・ベイなどの灯台も風景が美しく、気ままにドライブするのも一考でしょう。

  Pemberton Tramway Company Pty Ltd

  Google Map 場所

  路線案内図(C)Penberton Tramway

PHOTO GALLERY

Pemberton

・ちょっぴり町外れにある駅舎。なぜか道路側にはありません。ヤードもちょっとした広場の様。日曜日とあって家族連れもいっぱい。

       -2005.5.1

・SLは大型のもので迫力があります。

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・トラムは無造作にヤードのすみっこに固められています。お客さんに応じてトラムカーの増解結します。

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・構内にはかつて使われていたDLや火災警報発令中に使うDLなども置かれています。

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・駅舎はかつての栄華を物語ります。

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Lyall Line(SL)
-運休中


Pemberton~Eastbrook Siding

・ペンバートンを出た列車は緑深い森の中を進みます。

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・木々がユーカリ系でなければ北海道のような感じです。

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・リンゴ畑の中を進んで行きます。

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Eastbrook Siding~Lyall Siding

・終点に向け丘陵地をぐねぐね進んでいきます。

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・もうすぐ終点、列車もスピードを落として煙も出ません。

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Lyall Siding

・終点のライエル・サイディングはその名のとおり側線があるだけ。駅というような格はありません。まわりには何もなく、SLの付け替えの間はみんな待ちぼうけです。

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・SLの付け替えは側線を利用します。帰りのSLは逆向きとなります。

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Pemberton

・ライエルからの列車が戻ってきました。逆向きだと迫力がありません。機関車を入れ替えて午後便の段取りをして昼休みです。トラム乗車の人は急いで乗り換えです。

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Northcliffe Line(Tram)

Pemberton

・トラムのつくりはかなりチャチ。動力源は非力そうなディーゼルエンジン。窓もなくビニールシートでカバーしたまるでテントのよう。緑の中の散策ということで、まあ、こんなもんで十分なのでしょう。

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・お客さんが揃って定刻になると発車。エンジンをちょっとふかした後はアイドリング状態で音もなくスーッと走り出します。

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Pemberton~Warren River Bridge

・街中を走る目抜き通りを越えると深い森の中へ。

       -2005.5.1

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