解説

ウェスト・コースト・ワイルダネス鉄道は、もともとクイーンズタウン(Queenstown)にあったマウント・ライル鉱山からタスマニア南西部の港町、ストラーン(Strahan)へ鉱石を運ぶ目的で作られた鉄道で、開業が1899年の歴史ある鉄道です。

キング川に沿って敷設されましたが途中勾配がきつく、創業時からアプト式のラックレールが採用されていました。旅客も行われていたようですが、その後の鉱山の統廃合などでその役目を終え、1963年に廃止されてしまいます。

しかし、地元企業やタスマニア州政府などが観光開発でこの鉄道を復活させようという機運が高まり、2002年12月27日から新たに「ウェスト・コースト・ワイルダネス鉄道」として、復活を遂げました。(正式開業は2003年に入ってから)

もちろん沿線は一般の旅客輸送を行うほどの人口はなく、完全な観光鉄道となっています。復活に当たっては、一部鉄橋など流されたりしてましたが路盤の状態は比較的よく、思ったほど手がかからず再開することができたようです。

また、開業に当たってはかつて使われていたSLも手入れされて復活(石炭→重油になってしまいましたが)、客車も再現されました。また起点終点の駅舎も再現され、構内に新たにターンテーブルも設けられるなど、結構お金を突っ込んでリメイクされました。 運転形態は2つに分かれ、下流はDL牽引の客車列車が、上流はSL牽引の客車列車が運行され、中間地点となるダビル・バリル(Dubbill Barrill)で乗換となります。レールはつながっていますが、ダビル・バリル~リンチフォード(Lynchford)がラックレールとなっているのとSLの保全も兼ねて分割運転されているのでしょう。


沿線風景

起点となる町ストラーンは小さな港町。少し町外れの街、リガッタ・ポイント(Regatta Point)に始発駅があります。もともとストラーンまで線路が延びてましたが、現在はこのリガッタ・ポイントからレールが始まります。 駅はオールドスタイルの風格ある感じで、往年の雰囲気が上手に演出されています。

駅を出た列車は海沿いの風景を眺めながらのローカル鉄道の旅が始まります。ガタゴトと2~3両連結した車両が走る風景はなかなか魅力的です。

ロワーナ(Lowana)を経てキング川に突き当たる形で線路は左にカーブ。キング川峡谷に入ってきます。

キング川を右手に進み鉄橋を渡ると次の停車駅であるティープッカーナ(Teepookana)。列車はここで小休止。その間、周辺での散策タイムが設けられています。周りはうっそうとした森で大自然を満喫できます。

再びキング川を渡り、深い渓谷に入っていきます。ダビル・バリルは列車乗り換えの中間駅。また列車の撮影タイムでもあります。うっそうと茂る森の中にあり、接続する道路も集落もありません。ここダビル・バリルからはラック区間が始まります。クイーンズタウン駅にあるラックレールの解説模型

リンチフォード(Lynchford)に到着するまで、険しい渓谷と深い森の中を進んでいきます。思いっきり森林鉄道の様相です。SLには給水車が付いていないタンク機関車のため、リナーディーナ(Rinadeena)、ホールズ・クリーク(Halls Creek)、リンチフォードと各駅に停車し水を補給します。

リンチフォードを過ぎ、視界が開けて住宅街が見えてくるとクイーンズタウンの街。 左手にヤードを見ながらレトロな駅舎に列車が突っ込んで終点。約4時間半の旅は終了です。クイーンズタウン駅もリガッタ・ポイント駅同様のレトロ調にまとめられ、いい雰囲気を醸し出しています。

列車は到着後機関車を切り離し、駅北側にあるターンテーブルで手動で方向転換、機回しを行い再び来た道を戻ります。到着後入庫の場合も同様に機回しを行い、本線を少し進んでバックで車庫に収められます。

なお、この鉄道はフェデラル・ホテル・グループ(Federal Hotels group)というホテル会社が経営しています。いろんなパッケージツアーも組んでいますので旅程作成にはホテルサイトをチェックしましょう。


旅メモ

この鉄道のアクセスは少々悪く、州都ホバートからだとフランクリン=ゴードン・ワイルド・リバース国立公園を横断してクイーンズタウンへ。景色はすばらしいですが途中の道はカーブが多く、運転がたいへんです。所要時間は最低4時間は見ておいたほうがいいでしょう。

また北部のバーニーからだとストラーンまで車で3時間かかり、往復での旅行は少々きついと思われます。

ベストなのがストラファンで1泊し、鉄道旅行を往復し満喫、さらにストラーンで1泊して次の行程を組み入れるのがいいでしょう。

なお、クイーンズタウンはかなり小さな町なので、拠点にするならストラーンがお勧めです。


PHOTO GALLERY

Queenstown

・駅は意外とシンプルな作り。開業にあたって新設されたので真新しい駅です。

     -2006.1.6

・転車台は人力で回します。機回しは駅構内で行います。

     -2006.1.6


・駅のホームはちょっぴりレトロ感がある雰囲気に仕上げてます。列車が行ってしまうと人気がなくなります。

    -2006.1.6

・駅前いなるレトロなホテル。ここで泊まってストラーンへ移動する観光客もいました。

   -2006.1.6



Queenstown~Lynchford

・駅を出発。結構観光客がSLの写真を撮るために群がっています。

      -2006.1.6

・SLは本物ですが重油を使っているためモクモクとした煙は出ません。

      -2006.1.6



Queenstown(車庫)

・ホバートから車をぶっ飛ばし、なんとかギリギリ間に合って・・。でも入庫寸前でした。

     -2006.1.5

・客車は駅構内に、SLは機関庫で保管となります。到着時と出発前にはSLの入れ替えが行われます。

      -2006.1.5

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