解説

タスマニア鉄道メルバ線は、鉱石列車が走る全線単線の路線で、その性格から鉱山の専用線といってもいいでしょう。もともとこの路線はエミュ・ベイ鉄道という鉱山会社が所有する私鉄でしたが、タスマニアの鉄道が民営化されたあと、2004年にタス・レイルに統合され現在に至っています。

創業は1897年という歴史のある鉄道で、もともとはライル山麓~クイーンズタウンにあった金鉱・銅鉱との接続に作られた鉄道です。路線はバーニーからギルフォード(Guildford)、ローズベリー(Rosebery)を経てジーハン(Zeehan)に至る路線で、現在は鉱山のあるレニソン・ベル(Renison Bell)までの運行となっています。

線名となっているメルバ(Melba)はタラ(Tullah)、ローズベリー、レニソン・ベルがあるこの辺りを「メルバ・フラッツ(Melba Flats)」エリアと読んでいることからつけられた名前です。

過去1961年~1964年までは旅客の運行も行われたことがありますが、基本的には鉱物を運ぶ貨物鉄道として現在に至っています。またギルフォード・ジャンクション(Guildford - junction)から分岐してマウント・ビショフ(Mount Bischoff)錫鉱山までの路線がありましたが現在は廃線となっています。

またライル山麓にはかつて金鉱や銅鉱などがたくさんあり、ローズベリーからジーハン、クイーンズタウンにかけて鉱山鉄道が発達していました。またクイーンズタウンからストラーン(Strahan)の港までを結ぶ区間は2003年にウェスト・コースト・ワイルダネス鉄道(West Coast Wilderness Railway)として復活し、観光鉄道として人気のスポットになっています。

さて、鉱石列車は平日のみの毎日運転となっており、1~2往復/日の運転頻度となっています。需要動向で運転本数は変わるようなのですが、おおむね鉱山を午前に出て、バーニー昼頃到着、午後鉱山に向けて出発(1400~1500くらい)という運転パターンになっています。土日祝日は運休します。

平日のみの1~2往復という過疎路線なのですが、これでもタスレイルで一番運転頻度の多い路線です。積出港のあるバーニーから鉱山のあるレニソン・ベルまで、途中列車交換をせず港と鉱山を行ったりきたりするダイヤが組まれています。

列車の構成は、DL3連または4連+貨車というのが基本となっており、迫力ある編成となっています。鉱山から港まで結構高低差があるため、こうした重装備の編成となっています。鉱山側からだと荷の重い列車が勾配の下りになりますが、満載した鉱石の重さを制御するためにも重連は必須となっています。

沿線風景は、バーニーからサウス・バーニー付近でデボンポートとの路線から分岐、ここから大きく右に切って丘陵地をかなりきつい勾配で上っていきます。登りきったヘヴンビュー(havenview)からはゆるい勾配の丘陵地を南進していきます。ラッジリー(Ridgley)~ハイクレア(Highclere)とハンプシャー(Hampshire)~トロンナ(Toronna)にかけては道路が平行し、列車の追っかけも自由に出来ます。

Toronnaを過ぎ、ギルフォード・ジャンクションを過ぎ国道の跨線橋を越えたところから、うっそうとした原生林の中を進んでいきます。このあたりからローズベリーあたりまで、並行する道路もなく、山の中をひたすら進む感じになります。途中にはローズベリー湖を渡る有名な鉄橋があり、撮影ポイントにもなっています。

ローズベリーはかつてあった鉱山鉄道の残骸が残り、一部を利用した保存鉄道「Wee Georgie Wood Railway」が走ります。特定日曜日だけの期間限定運転となっています。

ローズベリーを過ぎ次の町のレニソン・ベルが鉱山のある終点。実際の線路はその先のジーハンの街まで続きますが、現在は廃線同然となっています。なお 終点のレニソン・ベル付近はすべて鉱山用地となっており、立ち入りできません。

この路線の訪問は、並行する道路にバスの設定はなく、公共交通機関利用では不可能となっています。レンタカーでの訪問のみとなりますが、他のタスマニアの路線も公共交通機関利用ではなかなか訪問しづらいのでレンタカーは必須でしょう。

なお、バーニー以南は町と呼べるのはローズベリーとストラーンくらいしかなく、食料や燃料はバーニーで十分整えて訪問するのがいいでしょう。また、ジーハンにかつてこのあたりを走っていた鉱山鉄道の静態保存のSLなどがありますので、ついでに訪問するのもいいでしょう。

また、鉱山へ向かう列車を追っかけ、そのまま南進してストラーンまでのドライブルートを組むのもいいでしょう。ストラーンは観光鉄道のウェスト・コースト・ワイルダネス鉄道の出発駅で、時間があればストラーンで2泊し、挟まる1日でワイルダネス鉄道の乗車を楽しんで、バーニー方面への帰りの日を鉱石列車運転日に合わせるというのもいいでしょう。


PHOTO GALLERY

Burnie

・亜鉛鉱石とコンテナの積み出しを行う工業港に隣接。小さなヤード内で列車の入れ替えを行います。

         -2006.1.4


・鉱石の積み下ろしは次の列車が到着するまでに済ませます。奥に見える旧型DCはバーニー・レイルの車両。

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・メルバからの列車が到着すると入れ替えなどでいそがしくなります。

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・エミュー鉄道時代のDL。水色のカラーリングが特徴でした。

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Pigeon Hill - Ridgley

・牧草ロールが転がる牧歌的な風景の中を進みます。

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・アップダウンが比較的多くまたカーブも多いためスピードは出せません。

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Ridgley - Highclere

・開発が進んだこのあたりで珍しく高い木立の中を進みます。

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・のんびりした風景の中を鉱山に向け上っていきます。

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・エンジン全開で緩やかなアップダウンを上っていきます。

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・まっすぐに走る区間が少なくぐにゃぐにゃ進んでいきます。

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Highclere - Hampshire

・このあたりは結構勾配がきつく、排煙をもうもうと立ちこめらせ上っていきます。

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・この道路とクロスするあたりは上り下りとも撮影ポイントとなっています。

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・上記のポイントからサイド狙い。

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Hampshire - Ringwood

・ぐにゃぐにゃ線路が続きます。

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・エンジン全開状態でどこまでいけるんでしょう。

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・列車のスピードはそんなに速くないので追っかけが気軽にできます。

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Ringwood - Toronna

・単なる道路わきからの撮影ですがどこも結構いいアングルで狙えます。

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・築堤を行く場所はこのあたりだけと限られます。

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・追っかけもこの辺まで来ると疲れてきます。

      -2006.1.4

・特徴のある風景というより同じような景色が続く・・・と思ったら線路は大きく左に曲がり森の中へと続いていきます。

    -2006.1.4

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