ノーザンテリトリー(The Northern Territory:略号「NT」)はオーストラリア中央北部の準州で、1978年連邦政府から準州の地位を認められた比較的新しい州です。北に面するアラフラ海、ティモール海の島嶼も州に含まれており、そうした島々はインドネシアとかなり近い距離となっています。 地域の大半は砂漠地帯で、北部海岸付近は熱帯雨林が繁茂する熱帯地域ですが、内陸に入ると樹木はまばらになり、アリス・スプリングスまでくれば赤茶けた大地がむき出しの光景となります。枯れ川も多く、その風景は独特の雰囲気となっています。 ![]() 特に南部はマクドネル・レンジと呼ばれる造山運動による山塊があり、飛行機から見ると不思議な光景に写ります。有名な観光地であるキングス・キャニオンなどはその一角となります。またエアーズロックなど有名な観光地も抱えます。 州都は人口12万人の北部港湾都市ダーウィンとなっています。このダーウィンは州一の大都市で、第2の都市アリス・スプリングスはエアーズロックなど有名なウルルの観光ゲート都市でありながらも人口は3万人弱、それ以外の都市はどこも小さな街という状況でかなりの人口希薄地域となっています。 それもそのはず、当州の自然環境は厳しく、大半の砂漠地帯は赤茶けた大地が横たわり、夏場は40度を越えることはざらであり、また水も少なく土地もやせていることから農業にも適しません。 ノーザンテリトリーの鉄道「FreightLink & The Ghan(GSR)」 さて、このノーザンテリトリーに走る鉄道は州を南北に縦断するアデレード-アリススプリングズ-ダーウィンの路線1つのみです。この大陸縦断鉄道のアリススプリングス-ダーウィン間はつい最近の2004年に開業した新しい路線です。運行・管理は「FreightLink」が行い、1日1往復の貨物列車を走らせます。また長距離専門の旅客鉄道会社「グレート・サザン鉄道(GSR)」が週2便の旅客列車「ザ・ガン」を運行します。 全線単線非電化で構成されていますが、運転本数は限られており、また物流量、移動する人々も当分は今の状況が続きそうで、この状態がしばらくキープされそうです。貨物列車はトンネルなどの障害がないためダブルスタック(コンテナ2段積み)で運行され、4重連のDLが長大編成を牽く大陸らしい運転が行われます。 この真新しい大陸縦断鉄道、しかしその建設は意外と古く、1878年に南オーストラリアのポート・オーガスタ(Port Augusta)から着工スタート。以降北進を続け 1929年にアリス・スプリングスに到達、ザ・ガン号の運転が始まります。一方ダーウィンからの南進工事も1883年にスタートします。1926年にはキャサリンまでの路線が完成します。 ![]() しかし、ポート・オーガスタ~アリス・スプリングスの路線は曲線が多く勾配もあり、また多くの枯れ川を跨ぐため集中豪雨による鉄砲水などで路線状況は芳しくありませんでした。そのため1957年に途中マーレーまで新たに新線を建設しなおしました。 その後、オーストラリアの軌間統一の話から新たに西側に直線を主体とした新線建設の話が立ち上がり、1980年に現在のタークーラ(Tarcoola)~アリス・スプリングスが完成、旧線が廃止されました。旧線は1067mmの狭軌で作られましたが新線はオーストラリア各地と線路を結ぶべく1435mmで敷設されました。 一方、北線は途中で建設が中断した状態で残り、金採掘などで一時は盛り上がったものの、大きな需要もなく1976年に一旦廃止されてしまいます。 その後北側のアリス・スプリングス~ダーウィンの建設話は予算の関係もあって出ては消えを繰り返します。1997年、やっと連邦政府から予算が出ることが決まり、2001年アリス・スプリングス以北の工事に着工。旧線とは別ルートでレールが敷かれ、2003年秋にダーウィンまでレールが1つにつながり、100年越しでの念願の縦断鉄道が完成しました。 なお、南側旧線は、ポート・オーガスタ~クオーン(Quorn)は保存鉄道「ピッチ・リッチ鉄道(Pichi-Richi Railway)」として現在も運行に使われ、1957年に新たに敷設され直された区間のうち、スターリング・ノース~コプレイは鉱山鉄道として現在も使われています。また、アリス・スプリングス郊外にはOld Ghan Museum & Heritage Railwayにかつてのアリススプリングス駅舎が移設されています。ここでは、廃線跡を使って往年の「オールド・ガン」号を運転していましたが、2007年から運行停止となり、現在は列車の展示のみとなっています。 |