ハンガリーの鉄道 TITLE
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最終更新日【2015.1.18】

ハンガリーの鉄道とは?

ハンガリーは中欧に位置し、旧共産圏時代でも東ドイツに並び、工業化が進んでいた国です。人口は約1000万人と小柄な国ですが、ベルリンの壁崩壊後は外資導入などで経済も発展し、中欧でもっとも成功している国となっています(とはいえ、現在は財政危機で政局は不安定)。南側は政情不安な旧ユーゴ諸国と隣接していますが、政治的にもまずまず安定し治安も比較的よいほうです(よくありがちな置き引きやスリ、ニセ警官、ネオナチなどはいる)。また、昔から物理学者や数学者の輩出が多く、優秀な学者が多いのも特徴です。

近代では首都ブダペスト(現地読みだと「ブダペシュト」)はオーストリア=ハンガリー帝国のハンガリー側の中心地として栄え、立派な宮殿や文化的な建物が数多く残ります。この国ではマジャル語(マジャール語という人もいる)という独特の言語体系を使い、日本語同様国際的にもっとも習得しにくい言語の1つとされています。

国土は内陸で海に接しておらず、国土を貫くドナウ川が運搬路として重宝されています。なので、ドナウにかかる橋は船が通れるよう立派なつくりになっています。また平原や丘陵地が多く、国境付近の山間地には緑も多く、自然豊かな国でもあります。中西部にあるバラトン湖はハンガリーにとって海のような存在となっており、湖岸にはリゾートハウスやプライベートビーチがならびます。

さて、ハンガリーの鉄道ですが、他のヨーロッパ諸国同様に鉄道が発達しており、網目状に主要都市を結びます。都市間にはインターシティーと呼ばれる特急列車が走り、スロバキアやブルガリアなどからの国際列車も発着します。

鉄道のほとんどはハンガリー国鉄(MÁV:Magyar Államvasutak)が運営にあたりますが、ジェール・モション・ショプロン県においては GySEV (Győr–Sopron–Ebenfurti Vasút:ジュール・ショプロン・エーベンフルト鉄道)という私鉄(ほぼ公営)が運営しています。独自の車両を持っていますが国鉄とは共用で運用され料金体系も国鉄に準じています。

また国鉄の赤字対策として2006年に貨物部門が分離、2008年に売却が行われ、2009年からオーストリア連邦鉄道(ÖBB)が経営を行っています。

他にも都市交通としてブダペスト交通のトラムや地下鉄、ミシュコルツのトラム、セーチェーニ山鉄道といった観光・保存鉄道が点在します。ナローで延長106kmもあるケチケメートを起点とケチケメート鉄道(国鉄管理)もあります。


ハンガリー国鉄(MÁV:Magyar Államvasutak)

ハンガリーの鉄道はほとんどを国が管理しており、客貨分離のスタイルを取っています。国鉄はインフラと旅客を担当、貨物は売却先のオーストリア連邦鉄道が運営します。またオペレーター、メンテナンス、リース等、各部門を分社化させており、旅客は「MÁV-START Zrt.」が運行しています。車両ロゴにはこの社名が付けられています。

国土には各都市を結ぶ網目状に路線が形成され、主要都市をほぼカバーしています。ただ列車の運用は首都ブダペストを中心に放射状に発着するため、地方都市同士での移動については一旦ブダペストに出て乗り換えたほうが早いケースが多いです。

軌間は大半が標準軌である1435mmでヨーロッパ共通の規格で隣国スロバキアやオーストリア、クロアチアなどから国際列車が乗り入れます。鉄道は発達していて幹線の複線・電化は完了しており、電化は3分の1に達しています。車両の運用は機関車が客車を牽引するヨーロッパスタイルが主で、一部列車には最後尾に運転台を設けて機関車の付け替えが不要のタイプも走ります。

また両数は少ないですが電車も走ります。2008年からは新型車両の導入を実施。通勤電車としてシュタッドラー製「FLIRT」、気動車としてシーメンス製「Desiro」が投入されました。ただこの導入に当たっては不正があったとして政治問題化しています。

運行は右側通行で日本とは逆です。また複線区間を使った複単線扱いでの列車追越も行われます。輸送量の少ないローカル線には主にレールバスが使われ、小さな車両がのどかな田園の中を走ります。

2007年、国の財政見直しとしてローカル線の廃止が進められることになりました。廃止対象路線は474キロ、14の地域の26路線で、2007年3月4日にまず14の路線が廃止されました。(Pápa-Környe, Pápa-Csorna, Zalabér-Zalaszentgrót, Lepsény-Hajmáskér, Sellye-Villány, Diósjenő-Romhány, Kisterenye-Kál-Kápolna, Mezőcsát-Nyékládháza, Kazincbarcika-Rudabánya, Nyíradony-Nagykálló, Békés-Murony, Kunszentmiklós-Dunapataj, Fülöpszállás-Kecskemét, Kiskőrös-Kalocsa) 

ただ、これ以降、国内で反発が起き、ローカル線廃止はストップ。2010年の政権交代で2007年に廃止された路線をすべて復活するとして、まず10路線で運転が再開となりました。(その後どうなってるかは不明)

国鉄の車体色は客車は淡いブルーに統一され緑が多い山々や草原の風景によく似合います。2タイプの等級に別れ「2」と大きく記された車両が2等車、「1」が1等車で、1等車は日本のグリーン車と同じです。1等車は幹線と国際列車に設定されています。また2等車は座席車とコンパートメント車があり、料金はかわりません。コンパートメント車は座席に座る際慣れない人は躊躇します(小さな診療所の待合室みたいでかつみんな外人だから)。

またインタシティと呼ばれる特急列車は少し豪華な造りとなりますが全席指定の特別料金が必要となります。都市間の高速移動に便利ですが本数が少なく、まだまだ国内移動は時間がかかります。

郊外路線は赤を基調としたレールバス、新型電車のDCカーが走る雑多な感じとなります。一部車両に1等座席がありますが、基本的に2等が中心です。

国鉄の車両色分けは機関車では青が電気駆動、赤がディーゼル駆動、車両は青が客車、赤がDCカーとなっています。緑はGySEVとなっています。最近導入の新型電車は赤なので、このルールが変わったのかもしれません。

列車の定時性はよく、乗換えなどの接続もしっかりしています。車内放送はないので目的地までは時刻表の到着時刻と停車駅を確認しながら下車の支度をしなければなりません。大きな駅では構内放送をしてくれるところがありますがマジャル語なのでちんぷんかんぷんです。

乗車券は事前に日本で手配可能です。旅行プランが決まっていれば前もって買っておいたほうが良いでしょう。ブダペストの大きな駅では外人用の窓口があって英語対応をしてくれますが、基本はあらかじめ紙に行き先と日にち、乗車時刻、枚数と等級を書いたメモ(もちろんマジャル語で:旅行ガイドに乗ってる言葉で十分通じる)を渡して購入したほうがいいでしょう。

現地発券の乗車券はなんかレシートみたいなペラ券で粗末でなんじゃこりゃって感じです。乗車券は日本で買うより現地で買うほうが料金は安いですが、時間に余裕を持たせたい場合は日本で手配しておきましょう。

ハンガリーも他のヨーロッパと同じく駅に改札はなく、以前はホームへは自由に出入りできますが、2009年からブダペスト市内区間とBKVとの乗車券共有化が行われてからは近郊列車ホームへは乗車券がないと入れなくなりました。長距離列車ホームなどは依然同様出入り自由となっています。

駅ホーム前での改札がなければ、乗車券チェックは基本、車内で行われます。日本と同じで車掌にチケットを手渡しチェックしてもらいます。また日本のように車内販売はありません。長距離列車の昼食時には乗ってくるようですが、メシ類は駅の売店で調達します。

ブダペストのケレティなど大きな駅にはキオスクがあって日本と同じく新聞雑誌、サンドイッチ、飲み物が売っています。言葉はマジャル語、または簡単なドイツ語しか通じないので(若いやつだとたまに英語がしゃべれる)、指差しで買うか日本と同じように商品をおばさんの前に差し出して買えばいいでしょう。

時刻表はメネトレンド(Menetrend)と呼ばれていますが現地では手に入りにくいため、あらかじめ日本でトーマスクックの時刻表をもっていくか、国鉄のウェッブサイトで調べておくのがいいでしょう。


ジュール・ショプロン・エーベンフルト鉄道 (GySEV ;Győr–Sopron–Ebenfurti Vasút)

ジェール・モション・ショプロン県に路線を持つ「ジュール・ショプロン・エーベンフルト鉄道:通称GYSEV(ジェシェヴ)」は国鉄とは別の経営主体で運行されています。もともとオーストリア・ハンガリー帝国時代に作られた鉄道で、当時の経営の取り決めから共産化の際にも国鉄に編入されることなく運営されてきました(ほとんどの株式はハンガリーとオーストリア政府が所有)。鉄道はオーストリアとハンガリーとにまたがっており、黄と緑の独自カラーが印象的です。

機関車や車両も国鉄とは別に持っており、オーストリアの路線と共用している感じです。またハンガリ国内においても乗り入れ列車など共通運用している列車もあります。料金はハンガリー国内においては国鉄と同様となっており、料金も通算されます。

全線電化されており、機関車+客車の典型的なヨーロッパ仕様の車両運用となっています。


ブダペスト交通(BKV:Budapesti Közlekedési Zrt)

ブダペスト交通(BKV Zrt.)は首都ブダペストの公共交通を一手に引き受ける輸送会社です。

「BKV(ビー・カー・ヴィー)」の正式名称は「Budapesti Közlekedési Zártkörűen Működő Részvénytársaság」というものですが、「BKV(Budapesti Közlekedési Vállalat)」という略称が通っており、鉄道は市内をくまなく網羅するトラムから、地下鉄、近郊電車「HÉV」、ケーブルカー、登山電車(MFAV)、バス、トローリーバスまでカバーします。

トラムは総延長200kmを誇る大規模なもので、地下鉄と連絡するよう市内を上手にカバーしています。連接車も多く、世界で一番輸送量の多い路線も持ちます(4・6番系統)。

トラムは旅客減などでかつての路線より3分の1ほど減少してますがまだまだ重要な交通機関です。最近は低床タイプの車両が導入され、雰囲気が変わりました。

「メトロー」と呼ばれる地下鉄は2タイプあり、トラム仕様の1号線と大量輸送仕様の2・3・4号線があります。1号線はロンドンについで世界で2番目に開業した歴史ある路線です。ただし電車での地下鉄はここが世界初だそうです。4号線は2014年3月28日に開業しました。

近郊電車のHÉV(ヘーヴ)はグリーンの車体の電車タイプで、トラムや地下鉄と接続し、郊外とブダペストを結びます。4つの路線があり、国鉄とは別の運行管理となっています。

ケーブルカーはくさり橋たもとから王宮までをつなぐ観光用のミニケーブルカーで、列車というよりも箱が上がり下がりする感じです。この路線はBKVのチケットが使えないため、乗車の際は別途チケットの購入が必要です。

登山電車はアプト式の鉄道でセーチェーニ山と麓を結びます。赤とクリームの配色がなかなかいい感じで、子供鉄道乗車時に使うと便利です。

BVKでは乗り物それぞれにイメージカラーを設けており、トラムは黄色、HÉV(郊外電車)は緑、トローリーバスは赤、バスは青となっています。国鉄MÁVの機関車の塗りわけ同様、こうした考え方は日本と良く似ています。

地下鉄は路線ごとにシンボルカラーを配し、1号線は黄色、2号線は赤、3号線は青、4号線は緑となっています。ただし車両は1号線はトラム色の黄色、2・3号線は運用車両を共用しブルー、4号線は白基調となっています。


その他都市交通

ブダペスト以外にも東部の都市ミシュコルツ(Miskolc)にはミシュコルツ都市交通(MKV:Miskolc Városi Közlekedési ZRt.)が運営するトラムが2路線、デブレツェン(Debrecen)にはデブレツェン交通(DKV:Debreceni Közlekedési ZRt.)が運営するトラムが、南部の都市セゲド(Szeged)にはセゲド交通(SZKT:Szegedi Közlekedési Kft.)が運行するトラムが3路線走ります。地下鉄はブダペストのみとなっています。


軽便鉄道・観光鉄道

いい感じの鉄道が各地に点在しています。子供鉄道と呼ばれる共産時代につくられた教育目的の軽便鉄道がブダペストにある有名なセーチェニ子供鉄道があります。また観光転用された森林鉄道がバラトン湖や避暑地のリラフュレドなど、全国あちこちにあります。

また現役の軽便鉄道として国鉄が運営するケチケメート鉄道はケチケメート(Kecskemét)を起点に2本の路線を持つ、軽便鉄道として106kmもある本格的なもの。小さな車体でも国鉄カラーを纏っており、一度は乗ってみたい列車です。

その他ハンガリー全国の軽便鉄道についてはkisvasut.huでの情報ゲットが便利です。各路線の紹介があります。



「鉄道がある風景」/RailScape
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