Page Start 2007.6.10 最終更新日【2012.7.21】
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タスマニア州の鉄道概要 オーストラリア大陸南西端にあるりんごの形をしたタスマニア島は面積が6万7800k㎡、北海道の大きさの約8割という大きさの島で、この島と周辺諸島でタスマニア州という州となっています。 主な産業は酪農、林業、観光といったところでしょうか。その国土の3分の1が国立公園で手付かずの自然が残る美しいところです。人口47万人と少なく、北部海岸部と州都ホバート周辺に人口が集中しています。州都ホバート都市エリアでも19万人という人口です。 さて、このタスマニア島には「TasRail」と呼ばれる鉄道が走ります。すでに旅客機能を失い、不定期運転の貨物が細々と走る鄙びた鉄道網と化しています。路盤の老朽化と需要低迷で全廃の話がちょくちょく出てくる状態ですが、タスマニアという大自然の景色に溶け込んだ、風景に富んだ鉄道風景が存在します。また特色のある保存鉄道もあちこちにあります。 (RAILMAP参照) タスマニア鉄道(タスレイル)/ TasRail 沿革 タスマニア島の鉄道は、州が経営する公営鉄道「タスマニア鉄道(通称タスレイル)」で、貨物専業鉄道となっています。実は州営になったのは2009年12月で、それまではオーストラリア本土でも貨物鉄道を営む「パシフィック・ナショナル(タスマニア)」が経営をしていました。 この鉄道、そもそものスタートは州営鉄道だったのですが、1975年に連邦政府が「Australian National Railways Commission」の1鉄道として連邦政府のタスマニア鉄道として編入、その後国の民営化政策の元、1997年11月、Australian Transport Networkとニュージーランドのトランツ・レール、アメリカのウィスコン・セントラル鉄道の合弁企業が引き継いで、現俗称の「タスレイル(Tasrail)」を社名として新たに出発しました。 しかし、その後、経営主体だったトランツ・レールが経営破たん。経営の晩年は貨車の整備不良などによる列車の運休も多発。また経営破たん前には決算を良く見せるためニュージーランドからタスレイルに中古の機関車が大量に売却されるなど、不透明な経営執行も問題になっていました。 2004年2月、オーストラリアの貨物鉄道会社のパシフィック・ナショナルがメインとなって、オーストラリアの物流会社トール社とともに事業を引き継ぎました(トール社はトランツ・レールも引き継いだ)。さらに2006年パシフィック・ナショナルはトール社に買収されトールグループの傘下に納まり、タスマニアの鉄道は事実上トールグループの1鉄道となりました。 また同じ頃、パシフィック・ナショナルへの経営移行期にメルバの亜鉛鉱山会社が管理していた私鉄「エミュ・ベイ鉄道(Emu Bay Railway)」を買収、新たにバーニー(Burnie)~メルバ・フラット(Melba Flats)がタスレイルの一部となりました。 その後、パシフィック・ナショナルによって運行が継続されますが、前歴のトランツ・レール同様にインフラへの投資を怠り、晩年は脱線事故など頻繁に起こすようになります。 2006年を過ぎると州からの投資がなければ全線廃止も止むを得ないと宣言するようになり、2008年、州はレールなどのインフラ部分を買い取り、オペレーションのみをパシフィック・ナショナルに任せます。2009年には大規模な脱線事故を起こし、南北を走る幹線が1ヵ月半にわたって運休。バーニー港での積み出しで揉め事を起こすなど、経営放棄とも見れる態度に州は態度を硬化。同年12月でもって株式を州が買い取り、もとの州営鉄道に戻りました。 オーストラリアでは97年の鉄道民営化推進で新しい会社が次々と生まれ、経営形態がややこしくなりましたが、民営化後のインフラ整備への投資抑制など、コスト削減を起因とする数々の問題が発生。2003年以降インフラを政府が再び買い取るなど新たな鉄道事業の再編が進みました。前述のとおり、タスマニアの鉄道も典型的な失敗パターンとなりました。 新生タスレイルは、まずボロボロといっていい軌道・インフラの整備を急ピッチで進め、物流の基幹インフラとして再生することに当面資源を集中することになるでしょう。レールは磨り減り、枕木もところどこと腐っていたりと、素人が見ても これ、やばいじゃん と思えるほどです。 路線紹介 さて、タスレイルは冒頭で紹介したとおり貨物専業鉄道で、タスマニアにおける旅客輸送は1978年に州営時代に撤退し定期旅客列車が走りません。島内での公共交通機関による移動はもっぱらバスとなっています。現在、旅客列車はツアー向けや記念列車などの特別列車のみが走るという状況です。 ただ、2006年からは運行管理上安全性が疑問視されるということで、本線上での旅客列車の走行が認められなくなっています。また貨物輸送は年々減少傾向で、島であるため運ぶ物資も限られていることから、輸送を増やすというのも難しい状況です。 現在鉄道路線は6線あり、1つは南北に縦貫する「南線」、ローンセストン~ベル・ベイ(Bell Bay)を結ぶ「ベル・ベイ線」、木材輸送が中心の「北部東線」、東西幹線の「西部線」、亜鉛・錫鉱石を運ぶ「メルバ線」、石炭運搬がメインの「フィンガル線」となっています。 支線的役目として、南線のホバート近郊のブリッジ・ウォーターから西へ分岐し製紙工場のあるボイヤーまでを結ぶ「ダーウェント線」があります。この路線はさらに西のメイデナ(Maydena)まであった路線で、現在はニューー・ノーフォーク(New Norfolk)以西は廃止され、うち一部の ノー・フォーク~ナショナル・パーク(National Park)はダーウェント・バレー鉄道(Derwent Valley Railway)という保存鉄道が運営します。ただし、この保存鉄道も2005年から路盤の老朽化で当局より運行停止処分が下され、今後廃止されてしまいそうです。
貨物列車の運転系統は単純で、鉱石列車はメルバの鉱山からバーニーの港への単純往復、ホバート近郊のボイヤーにある製紙会社向けの列車(紙・パルプ・コンテナ・石炭・木材)系統がボイヤー~バーニーとボイヤー~ベル・ベイ、ボイヤー~ホバートに、ホバートまたはベル・ベイからの海コンテナ、フィンガルからの石炭列車、デボンポート~レイルトンのセメント・シャトル列車が基本形です。 それぞれの運転は平日運転、隔日運転が中心となっており、本数が少ないため荷物次第で運行日時の変更をしたりします。機関車類は全線非電化ということですべてディーゼル機関車を運用。軌間が同じ(1067mm)のクイーンズランド州やニュージーランド、西オーストラリア州から集まってきたゴッタ煮状態となっています。 観光鉄道・保存鉄道 タスマニアには瀕死の鉄道網がある一方で、特色ある保存鉄道や観光鉄道、遊戯鉄道が存在します。一番有名なのが現役のSLを日曜日に走らせるドン・リバー鉄道。デボンポートの町外れドンからドン川べりに路線長3Kmの短いながらしっかりとした運転を行っています。また博物館をかねた大きな機関庫を持っているのも特徴です。その南、シーフフィールドにある歴史公園「レッドウォーター・クリーク」にはナロー軌道のミニSLが運行され、日曜日を中心に園内を走ります。 第2の都市、ローンセストンにはドン・リバー鉄道ツアー用DL車庫があり、旧ローンセストン駅構内から不定期に特別列車が仕立てられます。またテーマパーク「ペニー・ロイヤル・ワールド」にもテーマパーク間を結ぶトラムが敷設されています。ただこのテーマパークは経営不振で休館となっており、このまま路線も廃止される可能性があります。 州都ホバート近郊のグレンノーチ(Glenorchy)にはタスレイルの線路沿いを活用した「タスマニア交通博物館」があります。短い路線ながら月1~2回程度、所有のSLやDLの運転が行われます。その西、ニュー・ノーフォークには廃線となった路線を活用したダーウェント・バレー鉄道(Derwent Valley Railway)があります。かつては本線乗り入れの列車などツアー列車も走らせていましたが所有区間の安全上の問題から2005年から運行停止状態となっています。 州都ホバートではかつて市内を走っていた二階建てトラムを復活させようというプロジェクトがあります。こちらは資金難で頓挫しており、港沿いの公園に走らせる予定だったトラムを展示しています。 ホバートからさらに南、サウスポート近くのアイダ・ベイにはかつての軽便鉄道をちょっぴりだけ観光鉄道にリメイクした「アイダ・ベイ鉄道(Ida Bay Railway)」が走ります。原野の中をとおり美しい海岸までをトロッコが走ります。 島北西部バーニーからは隔週日曜日にペンギンを経てアルバストーンまでを結ぶ「バーニー・レイル」が運転されています。といっても、現在バーニー・レイルはタスレイル廃止問題で2006年1月から運転中止となっています。かつては夏季期間中ペンギンで行われるフリーマーケット開催日に合わせて隔日曜日運転され、風光明媚な海岸沿いを行くその車窓はなかなか良かったのですが・・・。さらに2012年5月に車両が放火されDP13はボロボロに・・・復活がさらに遠のきました。もし運転するなら運転日の確認はバーニー市のホームページで確認します。 島西部のタスレイル、メルバ線の途上にあるローズベリーにはかつてこのあたりに多く敷設されていた鉱山鉄道を復元した「ウィー・ジョージ森林鉄道(Wee Georgie Wood Railway)」があります。特定日に運転され、リアルなナローコースを体験できます。ローズベリーの南、ジーハンには当時の鉱山鉄道SLなど静態保存されたウェスト・コースト開拓者記念博物館(West Coast Pioneers Memorial Museum) があります。 さらに南の鉱山の街クイーンズタウンからは、かつての鉱山鉄道に手を加えた「ウェスト・コースト・ワイルダネス鉄道(West Coast Wilderness Railway)」が港町ストラーンまで走ります。途中アプト式レールがあるなど特徴ある鉄道で、原生林の中を行く森林鉄道の性格も持つことから旅行者に大人気です。 「鉄道がある風景」/RailScape Copyright ; © Yukihiro Minami, All rights reserved. / 版權所有 不得轉載
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